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おとめ山公園が大きく拡張されてオープン

 

2014(平成26)1026()の穏やかな晴天のなか、財務省官舎売却の情報Click!より9年、公園を拡張Click!する構想・計画Click!より6年の歳月をへて、新宿区立おとめ山公園の拡張工事が終了し、新たに拡張されたエリアが開放されました。今回は、改めておとめ山(御留山)の歴史をふり返るとともに、開園記念フェスタの模様をレポートします。

 この拡張の背景には、「落合の緑とおとめ山の自然を守る会」をはじめとする地元住民の強い意志と、「下落合みどりトラスト基金」の活動も大きく影響したといわれています。第1期拡張となった現「ふれあい広場」は、敷地が所有者から適正価格で区へ譲渡されるという画期的な事例であり、土地所有者の決断力と、たぬきの森に端を発した環境に対する区の政策転換が大きく影響しています。もし、同敷地が開発業者の手に渡っていれば、“たぬきの森”と同様に倍以上の地価となり、区は購入することができずにマンションが建設されていた可能性が高かったように思われます。

今回の公園拡張は、土地所有者の方や「落合の緑とおとめ山の自然を守る会」のみなさん、地域住民のみなさん、下落合みどりトラスト基金の活動、そして中山新宿区長による環境重視の英断など、さまざまな努力と幸運が重なった奇跡的な事例といえるかもしれません。

 

おとめ山公園の歴史

 

 

開園記念フェスタ会場に展示された「御留山」の歴史と、おとめ山公園の概要

●江戸時代

 おとめ山公園一帯は、将軍家の鷹狩り場に指定されていて、庶民は立ち入りが禁止されたエリアであり、当時は「御留山」と呼ばれていました。一方、清廉な湧き水と濃いみどりに恵まれ、江戸後期になると神田上水(現神田川)沿いは蛍の名所としても江戸中に知られていました。

●明治から昭和前期

 大正初期に、旧相馬藩主の家系である相馬順胤子爵が近衛家から御留山を買収して、広大な敷地に屋敷を建て、1915年(大正4)に下落合へと転居してきます。相馬邸の庭園となった御留山は、斜面を利用した広い芝庭と、アカマツを中心とする林、谷戸の湧水源など崖線沿いの景観は手厚く保護されていました。

●荒廃期

 1939(昭和14)に、相馬邸が中野へ移転し東邦生命が御留山一帯を買収すると、翌1940(昭和15)から高台を中心に宅地開発が進められます。しかし、すぐに太平洋戦争へと突入して、1945(昭和20)5月の空襲では新たに建てられはじめた家々も焼失し、戦後は十分な管理がなされずに旧庭園は荒廃し、植生の遷移も進んで、武蔵野樹林の原生種が生息する雑木林へと変貌していきました。1962(昭和37)に、地元のジャーナリスト竹田助雄氏は、新宿区に残された豊かな自然を「落合秘境」と名づけ、自ら発行していた「落合新聞」で頻繁に紹介しています。

●保護運動期

  1964(昭和39)年、敷地の大部分は大蔵省の所有地となり、公務員住宅の建設計画が持ち上がりました。これに対し、「落合秘境」の自然を開発から守ろうとする運動が、竹田助雄氏たちを中心に進められ、当時の田中角栄蔵相への陳情活動も行われて、公務員住宅の計画規模は大きく縮小されました。その結果、1969(昭和44)に新宿区立おとめ山公園が誕生することになります。

●公園敷地拡張期

 老朽化した公務員住宅の跡地全域を新宿区が取得し、湧水の保全、武蔵野の自然保護と再生を主眼とした拡張計画が推進され、6年の歳月をかけて、おとめ山公園の大幅な拡張を実現しました。

 

今回の拡張

 従来のおとめ山公園北側は、「みんなの原っぱ」として芝生が主体の広場となりました。工事中とオープン後の写真を比べてみると、谷戸がある従来のおとめ山公園側も明るくなり、開放的な雰囲気となりました。

 

オープン前の様子

 

オープン後の様子

 従来のおとめ山公園から、「ふれあいの森」「みんなの原っぱ」へとつづく道は、「林間デッキ」として整備され、リニューアルの大きな“目玉”のひとつとなっています。御留山の森を一望でき、下落合のみどり豊かな素晴らしい光景が眼前に広がります。原っぱに出ると、和風の休憩所や日本庭園を意識した水琴窟、石灯籠、飛び石などが配置されています。

 

オープン前の様子

 

 一方、おとめ山公園を東西に分ける通りを挟み、弁天池のある東側の敷地北側も、谷戸の地形や斜面を活かした広い芝庭が設置され、旧相馬邸の芝庭斜面を彷彿とさせる眺めとなっています。こちらも、従来のおとめ山公園の弁天池、さらには南側にある「水辺の森」へと連結し、明るく開放的な雰囲気となりました。

 

 

全面開園記念フェスタ

 工事のために張りめぐらされていたフェンスが取り払われ、おとめ山公園全面開園記念フェスタが晴天にめぐまれて開催されました。6年も待ちわびた住民のみなさんが、オープン時間が迫ると続々と集まりはじめました。特に子ども連れの方が多く、終始子どもの声が聞こえる快活で明るい雰囲気になりました。

 オープン記念式典をはじめ、町会のみなさんによる模擬店や、いろいろな動物とふれあえるミニ動物園、鉢植の配布、江戸時代の幕府御留山を想起させる鷹狩りのデモンストレーションなどが行われました。また、おとめ山の歴史紹介、落合中学校によるおとめ山の生態系ブース、海城中学高校地学部による水質調査報告、5年間におよぶ水位と湧水量の詳細な研究報告など、おとめ山の過去から未来を結ぶ、幅広い内容の展示や紹介が行われました。
 

 

 

 

 

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