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新宿区から「是正命令」中止の説明なし

 

  新宿区は、最高裁判決Click!による敗訴にともない、違法建築に対して「安全認定」および「建築確認」を下した責任をとる意味からも、区議会などで住民への説明重視の姿勢をたびたび強調してきました。しかし、以前にもこちらでご報告しました通り、新宿区は相変わらず住民に対してなんの説明もなく、遅れに遅れていた「11月の是正命令の準備」を突然中止Click!してしまいました。住民のみなさんは、区から中止にいたる経緯説明を受けるのではなく、新聞を通じて是正命令の準備中止を知ったというありさまです。新聞記者には説明し、問い合わせを繰り返しているかんじんの地元区民には、なんら中止に関する筋道の立った明確な説明をしようとはしない、本末転倒の新宿区の姿が改めて浮き彫りになりました。

  一部の文書には、「住民提訴(義務づけ訴訟)のため中止した」とあったようなのですが、今回の最高裁判決の主旨は、「火災により周辺住民の生命、財産の危険が生じる可能性がある」というものであり、たとえ一部の近隣住民の方が提訴したとしても、提訴をした原告ではない周辺住民のみなさんも数多く存在しているわけです。このレポートを書いている筆者も、新宿区を提訴している原告ではありません。違法建築の周辺に住む、数多くの住民の生命や財産の危機はなんら変わらずに継続しているのであり、担当自治体で責任のある新宿区は、誤った判断を自らの意志で是正するのが、違法行為をつぐなう唯一の方法ではないでしょうか?

  仮りに、なんらかの事情があるにせよ、何年にもわたり多くの区民を苦しめ、違法建築による災害の危険Click!を放置してきた責任において、今回の提訴とはまったく無関係な大多数の近隣住民に対しては、命令中止の理由を明確に説明する義務があると思われます。もし、それが実行されないのであれば、区議会での「対話重視」の発言とはいったいなんだったのでしょう?

  今回、義務違反で提訴した一部の住民の方のお話では、新宿区に対し「住民が提訴した方が、新宿区にとってはかえって処理手続き上の都合がよいのか?(是正命令を出しやすいのか?)」と、最高裁判決の直後から半年以上にわたり、何度も打診しつづけたそうですが、住民の方が義務づけ訴訟の決断をする直前まで、区からはなんら回答もなかったそうです。その後、ようやく「提訴してほしくない」旨の説明がありましたが、それまで何度も開示を依頼していた具体的な命令内容さえ、まったく明らかにしてもらえなかったそうです。

  高裁判決から2年、最高裁判決から丸1年が経過しようとしていたにもかかわらず、新宿区の対応は超スローペースで誠意に欠け、約束を守ってくれそうもない区に業を煮やした一部住民のみなさんが、ついに「期限の10月末まで命令がなかった場合には、義務づけ訴訟を起こします」と区へ伝えたそうです。それ以前の半年以上もの間、義務づけ訴訟の話題は出ていたそうですが、提訴した場合には「命令準備を中止する」といった主旨の説明は、新宿区側からはまったくなされていなかったようで、今回の一方的な「中止」の情報は原告ではない住民のみなさんも含め、まさに地元には“寝耳に水”の出来事でした。

  いまから6年前、新宿区建築課による違法な特例認定、つづけて建築基準法違反の建築確認から始まった「たぬきの森」問題は、地元の落合地域や新宿区ばかりでなく全国的な注目を集め、月並みな言い方をすればこれだけ「世間を騒がせた」にもかかわらず、結局、新宿区の組織内部では誤った施策を正して、本来の筋道に修正していこうとする自浄作用やそれに類する動きはほとんど見られず、最終的な判断まで司法のお世話になるという、新宿区民としても非常に恥ずかしくて残念な結果となってしまいました。

  新宿区の担当部局が、地元への「説明重視」を区議会で約束したにもかかわらず、きちんと住民のみなさんと向き合うことができず、また、住民が求めている説明や情報の開示ができないのは、単純に担当者がたまたま怠惰であるとか、対応がお役所的で緩慢なせいなのではなく、一貫して筋道の立った説明を行える「理」が、整合性のある言質を住民へとどけられる今後のビジョンや展望を包括した自治体としての施策「基盤」が、まったく存在していないせいだと言われても仕方のないことでしょう。そのような行き当たりばったりの姿勢や、「理」のない言動をつづける限り、新宿区はますます区民からの問いかけに対しては“沈黙”する以外、もはや方策(逃げ道)がなくなっていくことを、遅まきながら肝に銘じてほしいと思います。

  現在、一部住民の方々と新宿区、および業者(新日本建設株式会社)と新宿区の裁判は、何度か公判を重ねている模様です。新しい情報が入りしだい、こちらでご報告いたします。

 

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