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新宿区議会で“たぬきの森”問題を討議

 

 2009年(平成211217日の最高裁における新宿区敗訴Click!の判決後、初となる新宿区議会(第1回定例会Click!)222日より開催されています。22日の公明党・くまがい議員、社会党・河野議員、さらに223日の民主党・小野議員の質問に対する中山弘子区長の答弁要旨が事務局にとどきましたので、ご報告いたします。質疑応答は、要約すると以下の通りです。

■議員質問要旨

1. 安全認定、建築確認が違法とされたが、区長はどのような認識か? 区民と面談予定のわずか6時間前に認定を下したことに対し、区長は遺憾を表明したにもかかわらず、高裁敗訴後も上告した。これら一連の決定に対し、区長の責任は?

2. 今後、新宿区がこのような違法判決を二度と下されることがないよう、区としての対策は?

3. 最高裁の判決後、原告(周辺住民)や建設業者からはどのような要望があったのか?

4. それに対する今後の対応と、区の賠償責任については?

5. “たぬきの森”を区が買い上げる、公園化の見通しに関しては?

 

■区長答弁要旨

1. このような違法判決が出て、区民のみなさまにご心配、ご迷惑をおかけし、たいへん申しわけなく思っている。また、このような判断を最高裁が初めて下したことについては、きわめて重要なものと認識している。

2. すでに都市計画部建築指導課内に「情報連絡会」を設置し、当時は課長決定であった安全認定の事案決定区分を部長決定に改め、早い時期に建築関連の情報を集約し、庁内で共有化する体制を構築する。関係機関との情報の共有化、連携の徹底、チェック体制の構築等により、同様の事例が生じないよう最善を尽くす。

3. 原告(周辺住民)を含む、「下落合みどりトラスト基金」のメンバーと判決後に2回会合を行ない、既存の違法建築の取り壊し、および公園化への要望を受けている。一方、業者からは26億円を超える資金を投じた土地、建物の買い取りを含め、賠償方法について区から業者への具体的な提案を求められている。

4. 業者に対しては、 122日付けで安全認定を取り消した旨の通知書、建築基準法第6条第13項の規定による適合しない旨の通知書を送付し、併せて建築基準法にもとづく違法建築に関する是正計画の報告を求めている。これに対し、業者からは129日付けで土地、建物の買い取り等を求めてきている。しかし、法的には安全認定や建築確認申請は、申請者の責任においてなされるものであり、区が指示するものではなく、また安全認定や建築確認は、申請者の建築着工を義務づけものではないとされている。したがって、これにもとづく建設工事は申請者の責任と判断に委ねられるものである。

 加えて本件は、建築主の申請を認めた行政処分が違法とされたもので、区が建築主に対し不利益処分を行い、それが違法とされたものではない。したがって、区は建築主に対し賠償責任を負う立場にはないものと判断している旨、通知したところである。

5. 公園化については、現在建築主からの要求や申し出について、代理人弁護士を通じ慎重に対応しているところであり、現時点で判断できるものではないことを、ご理解いただきたい。多くの区民が納得できるかたちで、解決を図っていきたい。

 

■下落合みどりトラスト基金の意見

 中山新宿区長は、部下の大きな失態でこのような事態を招来したことを認め、是正策を具体的に提示しています。今回の問題は、新宿区建築課が“たぬきの森”をめぐり区民と区長との面談予定を知りながら、意図的に同課が区長に対して隠蔽し「特例認定(安全認定)」を出してしまったものであり、二度とこのような行為を繰り返してはなりません。

 「特例認定(安全認定)」は本来、区長の特別な許可がなくてはできないものですが、実際は区長の業務が多忙で、建築課が独断で下せることがいつの間にか「慣例」となっていたようです。“たぬきの森”問題を通じて、次々と繰り返される新宿区の愚行は、縦割り行政(区長vs建築課、建築課vs建築調整課、建築課vsみどりの課、建築課vs財政課、新宿区vs新宿消防署・・・etc.)の最たるもので、言いつくろったり強引に辻褄合わせを行なうための「ウソの上塗り」からくる詭弁や奇行の数々に、地元住民だけでなく多くの区民は呆れておりました。中山区長も、この縦割り行政の弊害に関しては以前から言及していましたが、今回の答弁はその課題解決のための具体案を示したものとなっています。しかし、「特例認定(安全認定)」が下されること自体、新宿区はもとより東京都でもほとんど例のないことであり、「今回の教訓を生かし、特例認定に関しては自らの責任において全事案を判断・決裁する」と、区長は明言すべきと考えます。

 未完成の「重層長屋」の解体に関しては、火災あるいは防災などの観点からみて、区民の生命や財産が危険にさらされている状態が1年以上もつづいており、業者との折衝や賠償問題とは切り離し、期限を定めて真っ先に対応すべき最優先課題です。(その危険性から最高裁による違法判決が下されたことを、決して忘れないでいただきたい)

 賠償責任に関する課題について、「下落合みどりトラスト基金」としては言及する立場にはありませんが、違法な認定をしていながら区には責任がないという考えは、当事者でなくとも馴染みにくく理解に苦しむものです。「重層長屋」で火災などが起きれば、多くの入居者や近隣住民の方々が犠牲になる可能性があることは、最高裁の最終判決で確定しました。新宿区の言い分を別のテーマに置き換えてみますと、たとえば安全基準が甘い自動車や航空機の運用を国が認定し、万が一事故が起きたとしても「認定自体は間違っていたが、乗るのは個人の自由だから関知しない」というような、無責任な言質にも聞こえてしまいます。もっとも、今回のケースは業者も説明会で言及していたように、裁判で違法建築となるリスクは十分承知Click!していたわけですから、区側に賠償責任などいっさいないという“論法”もあるのかもしれません。

 最後に“たぬきの森”の公園化に関して、新宿区は一貫して前向きの姿勢ですが、諸々の問題が重層的に発生しており、議会答弁での言及は避けています。公園化への道筋にはさまざまな課題があるにせよ、発端は自ら招いた違法行為にあるわけですから、中山区長をはじめ新宿区の行政各担当部局は解決へ向けて、鋭意努力を重ねてほしいと思います。地元の下落合を中心に、「トラスト基金」へ全国から集まったかつての23500万円という寄付額は、なによりも住民の強い要望や意志を表しています。都内はもとより、全国でもこれだけの寄付が集まることは稀であり、このかけがえのない意志を尊重すべきだと考えます。

 

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