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「執行停止申立」についての東京高裁による裁定

 

  26日に東京高裁によって裁定されました、「執行停止申立」Click!に関する資料を入手しましたので公開いたします。この申し立ては、先の東京高裁で勝訴した“たぬきの森”の周辺住民の方々が、新宿区に対して最高裁の判決が確定するまで「建築確認」処分の停止を求めたもので、東京高裁は住民側の意向を受け入れる判断をしたものです。

  これにより、新宿区が建設業者へ出した「建築確認」は、最高裁の判決まで失効することになり、新宿区は業者へその旨を通達する義務を負ったことになります。建設工事は、すでに高裁で違法建築と裁決Click!された時点から、事実上完全にストップしていますが、これで建築業者は法的にも工事を中止せざるをえなくなりました。以下、「執行停止申立」の要約ご報告いたします。

 

■「執行停止申立」主文

 東京都新宿区建築主事が新日本建設株式会社および株式会社ソフトアイに対して平成18731日付けでした建築確認処分(新都建()116)の効力は,本案上告受理申立て事件の判決があるまで、これを停止する。

■住民側(申立人)の主張

  本件建築物が完成すると、本件処分(建築確認)の取消しを求める訴えの利益がなくなるため、処分により生ずる重大な損害を避けるため、判決が確定するまでこれを停止するべきである。一般に建物が完成してしまうと、訴えの利益がないものとされる。そのような場合、平成16年以来4年間にわたって、法と正義に基づき生命、身体、財産を脅かす違法建築計画に対して、断固戦ってきた努力が水泡に帰し、回復し難い損害を被るとことになる。

■新宿区の主張

  住民らが重大な損害を被る合理的根拠はなく、「重大な損害を避けるため」との要件を欠く。よって、「執行停止申立」には理由がない。

■裁判所の判断

  本件建築物が完成すると、本件建築物の倒壊、炎上により、申立人らはその生命又は財産等に重大な損害を被ることが予想され、さらに完成によって、本件処分の取消しを求める訴えの利益は失われるため、損害を防止することができなくなる。以上より、本件処分の効力を停止する緊急の必要があると解することが相当である。よって、本件申立ては理由があるからこれを容認することとし、主文とおりに決定する。

■下落合みどりトラスト基金の所感

  先の判決にしたがい、高裁が近隣住民の主張をそのまま認めたかたちとなりました。住民側の弁護士が、理路整然とした文脈で2ページにわたり「執行停止」の正当性を主張したのに対し、新宿区が依頼している5名の弁護団は、裁判の主題に踏み込まずに出された「原告不適格」や「審査期間の徒過」など、かつての審査請求や裁判における結果を今さら持ち出し、「重大な損害はない」との連続性さえ意味不明な“論旨”を展開して、わずか数行のみの主張で終わってしまっています。従来どおり、その文脈や論理にはまったく具体性が欠けており、苦しさがはっきりと読み取れる内容となっています。高裁によるしごく明快な論理のもと、新宿区側の主張がここまではっきりと否定されてしまっては、もはや反論の入りこむ余地さえないように思われます。

  「下落合みどりトラスト基金」では、たとえ「重層長屋」が完成したとしても、近隣住民のみなさんや入居者の生命・財産などへ、重大な損害を与えかねない違法建築であることに変わりなく、仮に完成後であっても「建築確認」の取消しはありうる・・・との見方をこれまでしてきました。これは、専門家による判断内容をも含む見方になります。同時に、下落合に残るかけがえのない自然環境は、一度壊されてしまったら原状へ回復するのに長大な年月が必要なことも、繰り返し当サイトなどで指摘してきました。人命(人々が安全に暮らせる権利)の尊重と自然保護(たぬきに象徴される自然環境の保全)のテーマが、まるで1枚のコインの裏表のように、これほど密接に連関し合っている「事件」は、全国的に見てもめずらしいケースではないかと考えています。

  新宿区建築課に勤務していたほんのひと握りの役人が、新宿区民のみならず新宿区長をも結果的に騙し、私利私欲で無理やり「特例認定」をして、摩訶不思議な「建築確認」を出してしまったことに対する弁明は、もはや「恥の上塗り」と「嘘の上塗り」的な言い訳にすぎないように映ります。

 

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