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東京高裁で住民側が全面勝訴

 

 すでに14日、タイトルのみ(T/O)の速報でお伝えしました通り、114日の東京高裁判決は、原告である周辺住民のみなさんの全面勝訴となりました。新宿区建築審査や以前の裁判、そして前回の東京地裁判決を含め、本質的な課題に踏み込まず表層的な解釈による裁決・判決に終始していたものが、初めて訴訟課題の核心にメスが入った、きわめて正当な判決といえます。判決の詳細は後日お知らせしますが、主旨は以下の通りです。

 

■判決主旨

 新宿区区長が業者に対して、2006(平成18)731日付けでした建築確認処分を取り消す。

 行政がこのような裁判に敗訴するのは、最近たまに見かけるとはいえたいへん珍しく、いかに「特例」認定が異常で、建築確認がいい加減かつ違法行為であったのかがわかります。高裁判決は、今まで継続して「下落合みどりトラスト基金」がご報告Click!してきたように、1,000m2しか建てられない土地に2,800m2の「重層長屋」(実質マンション)を建設することは、新宿区の「特例」認定の内容ではきわめて不十分であり、火災や地震などの災害時に居住者の安全を確保できず、また火災による延焼で近隣に大きな被害を与える・・・という危険性を、全面的に認めたものです。

 

 “たぬきの森”の敷地は、周囲が公園や更地に接しているのではなく崖地(特に南・南西側)に囲まれており、唯一の避難路である幅4mの路地が40m近くつづくことは緊急災害時の避難に直接影響をおよぼし、緊急車両の回転(Uターン)やすれ違いができず、大惨事になる可能性を指摘しています。さらに、新宿消防署が提出した異例の意見書Click!にある近隣の狭い道路状況にも委細に言及しており、住民の安全性をなによりも最優先したしごく当然の判決となっています。これにより、現在建設中の「重層長屋」の一部を取り壊して規模を縮小するなど、場当たり的・刹那的な設計変更では対応できるはずもなく、業者である新日本建設は仕掛りの「重層長屋」をすべて取り壊して、新たに合法的な建物へ全面的に設計し直す以外に選択肢はなくなりました。

 

 また、建築確認の取り消しにより、“たぬきの森”の土地は3,000m2未満の建物が建築可能なものから、一気に1,000m2未満の建物しか建てられない敷地となってしまったため、地価はおよそ2分の1以下になることが予想されます。たいへん皮肉なことに、新宿区が公園化を前提に買収価格の土地査定をした通りの、正常な状態にもどってしまったわけです。

 当時、火災や安全性に関しては無知な新宿区建築課は業者の言いなりとなり、「特例」認定で3,000m2未満の建築ができるとしましたが、公園化の想定を受けた新宿区財務課は、依頼した一級建築士の土地査定にもとづき3,000m2未満の建物は無理で1,000m2未満の評価をして、住民側から「新宿区はダブルスタンダード」と評された経緯があります。

 

 業者である新日本建設は、このような建築リスクをあえておかし、地元住民の「説明会」を通じての要請はもちろん、「トラスト基金」に寄せられた全国のみなさんの声や署名、新宿区ヘの再三にわたる譲渡依頼などをいっさい丸ごと無視して、濃いみどりが豊かな森の伐採を強行し、違法かつ犯罪的な「重層長屋」を無理やり建設したことが、このような結果になったわけです。

 

 今回の高裁判決が出たことで、およそ4年間にわたる審査請求・裁判がひとつの転機を迎えました。建設中の「重層長屋」は法律無視の違法建築となり、居住ができないばかりか、居住者の募集もいっさいできなくなりました。今後は、2週間以内に新宿区が最高裁へ上告するか否かに注目が集まることになります。これだけ住民側の主張を認め、詳細な内容まで踏み込んだ判決がくつがえることは稀で、いたずらに税金を投入し新宿区が裁判を継続することに、地元はもちろん、区内のあちこちから疑問の声が数多くあがるものと思われます。

 

 公園化へ向けて、これからも困難な過程がつづくと思われますが、地元・新宿区をはじめ全国のみなさんによるご支援・ご協力のおかげをもちまして、目白崖線に残された貴重な武蔵野のグリーンベルトを残すための道筋が、まだ薄っすらと淡い色ではあるものの見えてきたような気がします。今後とも、みなさまからの熱い応援をよろしくお願い申し上げます。

 

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