トップページ

建築課長が避難路狭小を容認! 国交省再審査請求へ

 

 2006(平成18)95日付で、近隣住民のみなさんが新宿区の建築審査会へ改めて提出していた、特例認定や建築確認に関する審査請求について、611日付の裁決書(住民側棄却)が「下落合みどりトラスト基金」あてにとどけられましたのでご紹介します。

 

 これまでサイト上へ何度も掲載していますが、改めて問題点の概略を整理してみます。たぬきの森の土地(570)の形状は、約30mにわたる細い4m路地の先に住戸が建設されるという、典型的な「旗竿」状の敷地で、東と南は災害時に避難が困難な崖地、また4mの路地には明治時代の古い木造家屋が現存しています。避難路はこの4m路地ひとつしかなく、火災の際には避難や消火活動にとって危険性がきわめて高いため、1,000m2未満の住戸は建設できますが、マンションなどの集合住宅は建てられません。

 

 東京都建築安全条例では、「建設物周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事(区長)が安全上支障がないと認める場合において、適応しない(緩和可能である)」と、特例を認めています。本物件は、この特例認定により1,000m2未満の住戸しか建てられない土地に、約3倍にもおよぶマンション様長屋の建築が許可されてしまいました。この「無法」状態に対し、住民側はさまざまな法的根拠や正当な理由を添えて、建設物周囲の空地の状況や、土地および周囲の状況は安全上支障があると主張。特例認定をおろした、新宿区建築課と対立しました。

 そもそもこの特例認定は、新宿区長が決裁して出すものですが、当時の建築課は区長に詳細をまったく報告せず、密かに独断で認定してしまったことに住民たちはまず激しく憤慨しました。新宿区建築課は、区長と住民たちとの面談(区に2億円の寄付と隣接する470坪の寄付申し出の会談)があることを知りながら、区長には秘密で会談のわずか6時間前に業者へ特例認定をくだしたのです。その後、中山新宿区長はこの事実を知り、「トラスト基金」の活動に共鳴して54,000万円の買収資金も用意してくださいましたが、いまだ業者と折り合いがつかず、建設が始まってしまいました。

 

 今回の新宿区建築審査会への審査請求は、以前、地裁と高裁で自らの判断が誤りとされた「処分性なし(特例認定には意味がなく、その後の建築確認が意味をもつ)」に関してはあっさり誤りを認め、その他は新宿区の主張をまるでトレースするような内容で、住民側の主張をすべて退けています。住民側は、当然これを不服として、近日、国土交通省へ再審査請求することを決定しています。新宿区建築審査会の委員5名のうち、行政関係の委員が2名も入っており、とてもフェアな判断ができる機構ではないとの声もあるようです。

 

 常識的な観点からみれば、他区へのアンケートClick!結果でも明らかなように、本件はとても安全とは思えない建設計画ですが、安全か否かはつきつめれば主観の問題となりますので、明らかに危険な計画ではあっても、今回のように裁定を“主観的”にこじつけることができてしまいます。しかし、627日の業者による住民説明会Click!でも明らかになったように、周囲の安全空地に関してはまったく完全数値を満たしておらず、明らかに審査会の判断は誤りとなります。すなわち、新宿区建築課が特例認定の条件として規定している、安全空地とは・・・

 「計画建物と隣地境界線との間に有効幅員2m以上の空地を設けます。緊急時の避難経路として機能するように(中略)。通行の障害となる建設物,工作物は設けません。既存の植栽、樹木についても通行の障害になる場合には伐採,移植することとします。(後略)(原文ママ)

・・・となります。

 

 しかし、今回の説明会では、確かに近隣とは2m以上の間隔がありますが、崖と植栽のため避難路としての最小幅で1.5m1.8mしかないとの業者説明です。業者側も不安になったのか、何度も責任者である前建築課長と現建築課長に確認していますが、「問題ない」との回答があったとのこと。新宿区建築審査会は6ページの2で、「本建築物と各隣地境界線との間には幅員2mから約4mの避難のための空地が設けられていること」と、本計画が安全である理由の第2番目に挙げています。これは、他の「安全」理由と異なり、主観ではなく数値自体の錯誤で、この1点だけからでさえ特例認定や建築確認が誤りといえます。はたして、新宿区建築審査会はもっとも根本的なこの項目に関し、まともに事実を直視して検討したのでしょうか?

 「トラスト基金」が、特例条件を規定している渋谷区にお訊ねしたところ、「渋谷区は周囲に3m以上の空地があれば、3m道路、4mの路地、前面の公道とつながり避難可能(安全)と判断します。むろん、木や建物があってはいけません。道の真ん中に何かあれば、道路=避難路としては機能しないでしょう。3,000m2以上なら道路として最低基準4mは必要で、2,000m2未満なら2mです。だから、2,800m2なら3mが必要なんです」と、ていねいに説明してくれました。

 

 新宿区の特例文面からも、渋谷区の緩和規定ケースからも、空地=避難道路であり、新宿区建築課が主張するような近隣との延焼予防だけのためではないように解釈できます。もし新宿区の主張通りであるならば、近隣との間に2mの間隔だけを設け、そのわずかな空間を「活用」して樹木やゴミ捨て小屋、室外機、物干台、駐輪場などを無制限に設置しても「適法」という、とんでもない解釈さえ成立してしまいます。論理が破綻し、数値の錯誤さえ黙殺し、詭弁を重ねつづける新宿区建築課ではなく、監督する立場である国交省であれば、まともな視点から正確に判断してくれるのではないかと思います。

 

Copyright © 2005-2007 Shimoochiai Midori Trust. All rights reserved.