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高裁判決と審査会口頭審査のご報告

 

  遅くなりましたが、東京高等裁判所の2審判決、および新宿区の建築審査会における口頭審査の結果をご報告いたします。「下落合みどりトラスト基金」も強い関心を寄せている、ふたつの審議の詳報です。

 

124日/東京高等裁判所の判決

  高裁の判断は東京地裁同様、マンション管理組合の原告の適格性がないとの判決で、基本的には地裁の判決を支持する内容となりました。「特例安全認定」の適法性、「特例安全認定」認定の処分性などの判断が注目されていましたが、判決では触れられていません。今後、本裁判について最高裁へ上告するかどうかの情報は、いまだ「トラスト基金」にはとどいていません。

  また、この裁判とは別に、たぬきの森の東側に隣接し原告となったマンションの管理組合ではなく、建設工事によって直接影響がおよぶ周囲の近隣住民の方々が、改めて新宿区の建築審査会に再度審査請求をしています。(下記参照) 審査会の結果しだいでは、こちらも提訴に踏み切ることもありうるとのことですので、たぬきの森の「重層長屋」(実質マンション)建築をめぐる可否の判断は、まだまだ先になりそうな気配です。

 

129日/建築審査会口頭審査

  たぬきの森周辺にお住まいになる別のグループの方々が、新たに新宿区の建築審査会へ向けて異議申し立てをしている、上記の裁判とは異なる新しい案件です。「特例安全認定」の適法性や「特例安全認定」認定の処分性、そしてこれらに基づく「建築確認済証」に関してフェアな立場であるはずの建築審査会に、改めて審査してもらおうというものです。

  2005年(平成177月に行われた建築審査会口頭審査では、住民側・区側ともに活発な意見が述べられましたが、今回は、審査会側が「斜めに接道8mで問題はないのではないか?」などと、すでに両者にとって解決している問題(実質4mで特例認定適応となった)について今さらながら質問するなど、住民側・区側双方の論点がまったく理解されていないような言動に、会場へ傍聴に訪れた住民たちは終始しらけたムードに包まれました。前回の審査会における失態(地裁判決において否認)を、とうてい踏まえているとは思えない口頭審査の内容に、今後の審査の推移がたいへん気になります。

 なお、以下に新宿区の建築審査会へ提出された、住民側の反論書を入手しましたので全文掲載します。内容が膨大なため、ご興味のある方はご覧ください。内容は、安全性や重層長屋の問題、見切りの認定の問題、1敷地に複数の建物をめぐる解釈の課題などが言及されており、要約は消防署の異例の意見書と公開された建築確認Click!、および建築基準法からみる<長屋>建築の疑問点Click!へ、すでに要約掲載しています。

 また、今回の反論書のポイントのひとつは、近隣の渋谷区・中野区・豊島区における「特例認定」の方法と、新宿区の現状との違いです。近隣区が認定に際し、きちんと法制に基づき実施しているのに対し、新宿区は「特例認定」およびこれに基づく「建築確認」を、新宿区行政手続条例5条にしたがって行っていないという点です。新宿区には建築確認の公開時に、全情報783件中751件(95.9%)を非公開にするという、驚くべき現状があります。この隠蔽体質につきましては、区民から現在提訴されているとの情報も伝わってきています。以下、反論書の全文です。

18新建審請第4号

 

  平成19年1月29日

 

新宿区建築審査会 御中

 

                       審査請求人代理人

               弁 護 士    川  上  英  一

               弁 護 士   飯  島  康  博

               弁 護 士   藤  田  祐  子

                                    復代理人

               弁 護 士   大  嶋  永 姫 子

               弁 護 士   服  部  知  之

反 論 書 (2回)

 

第1 新宿区行政手続条例違反

第2 行政手続法違反

第3 行政手続法制の公式見解

第4 処分庁の違法な行政

第5 弁明書2に対する反論(1回反論書の補足)

第6 「建築確認済証」の違法な交付

第7 行政運営における透明性の侵害

第8 提出証拠(甲8号ないし甲27号)


 

第1 新宿区行政手続条例違反

 

(1)被申請人(区長)は「新宿区手続条例は建築基準法令でないから、本件認定処分は新宿区行政手続条例5条に従って認定しなかった。しかし、それは違法でない。適法な安4条3項規定の認定処分である」と主張する。

 手続条例は、次のとおり規定している。

 

『1条

「この条例は、処分に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性行政上の意思決定について、その内容及びその過程が区民に明らかになること)の向上を図(る)、甲8号」

 2条(定義)

2)処分 条例等に基づく行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

3申請 条例等に基づき、行政庁(新宿区長)の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう

 5条(審査基準)

 1  行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかを、その条例等の定めに従って、判断するために必要とされる基準(審査基準)を定めるものとする

 2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、当該許認可等の性質に照らして、できる限り具体的なものとしなければならない。

 3 行政庁は、条例等により当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により、審査基準を公にしておかなければならない。』

 

 すなわち、行政手続条例は新宿区長が申請により求められた許可、認可、登録、認定など許認可等をするかどうか、その条例等の定めに従って判断するために順守しなければならない許認可等をする場合の手続に関する共通の手続法規である

 そして、本件認定は安4条3項に基づく処分であるから、手続条例2条2項の処分に該当する。

 従って、本件安全認定(4条3項)は、手続条例2条3項申請により求められる許認可等に該当するから、手続条例の手続法規に従って、判断(認定)しなければならい。手続条例が建築基準法令でないことは、全く理由にならない。手続条例の手続に従わない、4条3項認定は違法である。

 新宿区長は本件安全認定が手続条例2条3項申請により求められる許認可等に該当するのか、しないのか、明確に認否しなければならない。そして、本件安全認定は同認可等(処分)に該当しないと主張する、又は該当するが手続条例の適用がないと主張するなら、その理由を明確に主張説明しなければならない。

 

(2)以上、安4条3項は、新宿区行政手続条例に従えば、実体法は次のとおりになる。

「前2項の規定は、@建築物の周囲の空地の状況Aその他土地及びB周囲の状況により知事(新宿区長)が手続条例1条2条5条の定めに従い安全上支障がないと認められる場合においては、適用しない。」

 而して、新宿区長は本件認定は新宿区手続条例1条2条5条の審査基準を設定しないで、独自に、認定したと言う。従って、本件認定は、手続条例1条2条5条の定めに従わない認定で、それは安4条3項の認定ではない。

 

(3)すなわち、乙1号は新宿区長名義の文書ではあるが、手続条例1条2条5条・安4条3項に従わないでした認定書である。違法の認定書である。

  それは、刑事裁判で言えば、刑事訴訟法の定めに従わないでした裁判(判決)が違法無効であるのと、対比される。

 行政手続条例は建築基準法令でないから、それは順守しないで認定してよいとの主張は、新宿区行政手続条例1条2条5条(行政法規)の定めに全く違反する主張である。新宿区長は区条例(行政法規)に基づかないで、独自の許認可等を執行したと自認しているにすぎない。


 

第2 行政手続法違反

 

(1)被申請人(建築主事)は「行政手続法は建築基準法令でないから、本件建築確認処分は、手続法5条に従わないで、建築確認した。しかし、それは違法でない。適法な法6条4項規定の建築確認済証の交付である」と主張する。

 手続法は、次のとおり規定している。

 

『1条

「この法律は、処分に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性行政上の意思決定について、その内容及びその過程が国民にとって明らかになること)の向上を図(る)」

 2条(定義)

  二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

  三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

 5条(審査基準)

 1  行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令等の定めに従って、判断するために必要とされる基準(審査基準)を定めるものとする。

 2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、当該許認可等の性質に照らして、できる限り具体的なものとしなければならない

 3 行政庁は、法令等により当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により、審査基準を公にしておかなければならない。』

 

 すなわち、行政手続法は申請により求められた許可、認可、登録、建築確認など許認可等をするかどうか法令の定めに従って判断するために順守しなければならない手続に関する共通の行政法規である

 そして、建築確認処分は法律に基づく処分であるから、手続法2条2号の処分に該当する。

 従って、本件建築確認済証の交付(法6条4項)は、手続法2条3号規定の申請により求められる許認可等に該当するから、手続法の手続法規に従って、判断(審査)しなければならい。手続法が建築基準法令でないことは、全く理由にならない。手続法1条2条5条の手続に従わない、法6条4項規定の建築確認済証の交付は違法である。

 建築主事は本件確認処分が手続法2条3項申請により求められる許認可等に該当するのか、しないのか、明確に認否しなければならない。そして、本件確認処分の交付は該当しないと主張する、又は該当するが手続法の適用がないと主張するなら、その理由を明確に主張説明しなければならない。

 

(2)以上、法6条4項は、行政手続法に従えば、実体法は次のとおりになる。

「申請に係る建築物の計画が行政手続法に従い建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、確認済証を交付しなければならない(確認できないときは、確認済証を交付してはいけない)」

 而して、新宿区建築主事は本件建築確認は手続法5条に従わないで、独自に建築確認したと言う。従って、法6条4項の建築確認ではない。本件建築確認は、手続法1条2条5条の定めに従わない建築確認で、それは法6条4項の建築確認済証の交付ではない。

 

(3)すなわち、乙5・6号は建築主事名義の文書ではあるが、行政手続法5条・法6条4項に従わないでした建築確認済証である。違法の確認済証である。

 それは、刑事裁判で言えば、刑事訴訟法(刑事訴訟法規則)に従わないでした裁判(判決)が違法無効であるのと、対比される。

 行政手続法は建築基準法令でないから、それは順守しないで確認してよいとの主張は、行政手続法1条2条5条の定めに全く違反する主張で、建築主事は法律に基づかないで、独自の許認可等を執行したと自認しているにすぎない。

 行政手続法は新宿区建築主事が許認可等を執行する場合に適用される行政法規であり、この法律に従わない許認可等は違法である。


 

第3 行政手続法制の公式見解

 

 1 建築基準法と行政手続法との関係

 

 建築基準法6条4項に基づく建築物の確認及び同法88条において準用する工作物の確認は、法律に基づく処分であるから、行政手続法2条2号の「処分」に該当する。

 上記「処分」に該当するから、処分庁は、これら確認に当たっては、行手法5条の審査基準を定め、これに基づいて判断しなければならない。従って、被申請人の建築基準関係法令でないから適用がないとの主張は独自の違法な主張である。

 そして、法は「審査基準は許認可等の性質に照らし、できる限り具体的なものとしなければならない」と規定している。

 従って、工作物確認処分にあたり、東京都建築安全条例6条2項但書2号の「がけ又は既設の擁壁に構造耐力上支障がない」との規定は、極めて抽象的規定であり、透明性(行政上の意思決定について、その内容及びその過程が国民に明らかになること。以下、同じ)のある適格な判断をするためには、具体的な審査基準(数値を定めたもの等)を定めなければならない。

 また、令1条1号は、「敷地 一の建築物又は用途不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。」と規定しており、判断基準として極めて抽象的規定であり、透明性のある適格な判断をするためには、行政庁は、行政手続法5条により出来る限り具体的な審査基準(用途不可分の関係等)を定めなければならない。

 

 2 建築安全条例と行政手続条例との関係

 

 東京都建築安全条例4条3項は、法43条2項に基づく附加条件であるが、条例4条3項の安全認定処分は、安全条例に基づく処分であるから、新宿区行政手続条例が適用される。従って、被申請人の建築基準関係法令でないから適用がないとの主張は独自の違法な主張である。

 なお、安全認定処分は、地方自治法252条の17の1第1項に基づき定められた「特別区における東京都の事務処理の特例に関する」条例2条の表19項ハの規定により知事の権限から区長の権限とされているものである(甲9号証)。

 安全条例4条3項は、「建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事(区長)が安全上支障がないと認める場合」と規定しており、判断基準としては極めて抽象的規定であり、透明性のある適格な判断をするためには、行政庁は行手条例5条により出来る限り具体的な審査基準(甲5号・23号・24号)を定めなければならない。

 

 3 以上1・2について疑問があれば、新宿区長・建築主事は総務省行政管理局(「行政手続法の現場」総務庁行政監察局行政相談課)、総務省自治行政局、国交省住宅局に直接確かめられたい。

 そして、隣接の渋谷区(甲5)、中野区(甲23)、豊島区(甲24)等各区は、各区が制定した行政手続条例に従い、具体的審査基準を定め、公表し、それに基づいて判断し、許認可等をしている。新宿区は申請人の証拠に基づく上記主張に、ほお被りして、同主張について認否すらしない。速やかに、認否されたい。

 

 4 審査基準設定義務違反(不設定)と処分の効果

 

 1 処分庁は、「本件認定処分及び建築確認処分は、建築基準関係法令に適合するか否かを審査するものである」として行政手続法・新宿区行政手続条例5条の適用がない(具体的審査基準を定める必要がない)と主張するが、同主張は、同法・同条例が行政庁の処分等に関する手続に関し共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性行政上の意思決定について、その内容及びその過程が国民にとって明らかになること)の向上を図るものであり、従って、法律の規定に基づいて地方公共団体の機関(区長・建築主事)が行う処分には同法・同条例が適用され得ることを無視した、法律に従い行う行政(法律を誠実に執行すること憲73条1号・自治法138条の2)を否認する違法な主張である。

 

 2 審査基準に関する同法・同条例に違反して処分が行われた場合、当該処分は原則として違法となる。特に、審査基準を設定しない(審査基準の不設定)でなした処分は、独立した取消原因となり、取り消されるべきである(高橋滋「行政手続法」参照)。本件処分は、もとより、審査基準を設定しないで執行した処分であり、取り消されなければならない。

 

 3 取消判例参照(甲26の1、2

 

第4 処分庁の違法な行政

 

 第1ないし第3に述べたとおりであるが、ルールオブロー(法治行政)違反の観点から、以下のとおり補足する。

 

(1)新宿区長が「手続条例の執行を否認する」違法な行政

 @申請人は安4条3項認定処分に、手続条例が適用されると主張している。

 A処分庁は安全条例は建築基準法令に該当しないから、適用されないと主張する。

  そして、処分庁は反論書第2(4頁以下7頁)について、全く認否しない。認否できないのだ。そうでないなら、認否しなければならない。

 B手続条例は、憲法94条、自治法14条・96条により、新宿区議会が制定した行政法規である。

  手続条例は新宿区が権限を有する許認可等の処分に関する手続に関し共通する事項を定めている行政法規である。

 C自治法138条の2は地方公共団体の執行機関(区長)は、条例・法令の事務を誠実に執行する義務を負うと規定している。

  改正前自治法2条15項16項は、「地方公共団体は法令に違反してその事務を処理してはならない。法令に違反して行う地方公共団体の行為は、これを無効とする」と規定している。

 D申請人は手続条例が建築基準法令であると主張していない。

  手続条例が規定する条例に基づく行政庁の許認可等に、安4条3項の認定が該当すると主張している

 E而して、処分庁は安4条3項の認定は手続条例が規定する許認可等に該当しないと主張していることになる。

  そして、処分庁は手続条例は建築基準法令に該当しないから、適用されないと主張する。

 Fこれは、新宿区長が新宿区議会が憲法94条と自治法に基づいて区議会が定めた条例(手続条例)の執行を否認するものである。

 Gこれは、新宿区長の自治法138条の2・改正前自治法2条15項16項違反に該当する。

  渋谷区・中野区等は手続条例は建築基準法令でないが、各区手続条例を制定して、同5条審査基準を定め(甲5・23・24号)、認定処分している。

 新宿区は治外法権の特別区で、渋谷区・中野区・豊島区等とは法制度を異にしている

 Hそれは建築基準法令でないからと主張して、新宿区が自らの定めた手続条例を執行しない行政は、違法な行政と言わなければならない。

 

(2)新宿区建築主事が「行政手続法の執行を否認する」違法な行政

 @申請人は建築認定処分に、手続法が適用されると主張している。

 A処分庁は手続法は建築基準法令に該当しないから、適用されないと主張する。

  そして、処分庁は反論書第5(20頁・21頁)について、全く認否しない。認否できないのだ。そうでないなら、認否しなければならない。

 B手続法は、憲法41条国会が制定した法律である。

  憲法73条1号(内閣法1条)は内閣は、法律を誠実に執行することを定めている。

  手続法は行政庁の認可等の処分に関する手続に関し共通する事項を定めている行政法規である。

 C地方公共団体の機関(建築主事)は手続法2条2号規定の行政庁に該当する(総務省行政管理局行政手続法逐条解説)。

 D自治法138条の2は地方公共団体の執行機関(建築主事)は、条例・法令の事務を誠実に執行する義務を負うと規定している。

  改正前自治法2条15項16項は、「地方公共団体は法令に違反してその事務を処理してはならない。法令に違反して行う地方公共団体の行為は、これを無効とする」と規定している。

 E申請人は手続法が建築基準法令であると主張していない。

  手続法が規定する法令に基づく行政庁(建築主事)の許認可等に、建築確認処分が該当すると主張している。

 Fそこのところ、処分庁は手続法は建築基準法令に該当しないから、適用ないと主張する。

 Gこれは、新宿区建築主事が国会が憲法に基づいて定めた法律(手続法)の執行を否認するものである。

 Hこれは、新宿区建築主事の憲法73条1号・内閣法1条・自治法138条の2・改正前自治法2条15項16項違反に該当する。

 Iそれは建築基準法令でないからと主張して、国会が憲法に基づき定めた手続法を執行しない行政は、違法な行政と言わなければならない。

 

参考文献

「行政手続法(高橋滋)」

「逐条解説 行政手続法(総務庁行政管理局)」

「行政手続法の現場(総務省行政監察局)」


 

第5 弁明書2に対する反論(1回反論書の補足

 

 申請人の主張は、1回反論書に具体的に詳述したとおりである。ご精査をお願いする。これに対し、処分庁は認否せず、各事実について具体的に反論せず、本審査会に対し乙1ないし10以外証拠提出する考えはないと強弁している。そして、本件関係資料(証拠)の大部分を非公開決定処分した(甲18)。

 以下は、申請人主張の補足である。

 

一 弁明書22本文に対する反論(安全認定処分の違法)

 

 申請人は、反論書(T)第3及び第4(8頁〜19頁)において、具体的かつ詳細に証拠を付して、本件安全認定は違法であると主張している

 これに対し、弁明書22本文では、木で鼻をくくったように、前回の弁明書の主張を単純に繰り返し、「本件建築計画が安全条例第4条第1項の規定と同等以上の安全性を確保されていることから、安全上支障がないと認めたものである」などと独断している。同等以上の安全性が確保されていないと申請人が主張する各具体的論点につき、何の具体的弁明もなく、何の証拠も付していない。新宿区の主張に具体的正当性がないことを自ら暴露したようなものである。驚くべき傲慢行政と言わなければならない(これは決して言いすぎではない。地域に根ざし地域を愛する住民の真実の声である)。

 どうか、新井建築主事等は、弁明書26及び7のような主張をせず、請求人は違法性を主張する部分や内容などを具体的に示しているのであるから、これに対し、証拠をもって具体的に弁明して頂きたい。そして、確認した全部の証拠書類を提出して頂きたい。事実は、新宿区長は請求人の本件関係資料開示請求の大部分(783枚中の751枚)を非公開決定処分した(甲18号非公開通知)。どうか、中山新宿区長は、建築行政の新宿区民に対する説明責任を十分に果して頂きたい。それができないのなら、本件安全認定及び建築確認を取り消されたい。

 

二 弁明書22@に対する反論(長屋と判定したことの脱法性

 

1 新宿区建築当局の解釈誤り

 

(1)新宿区は、本件建物は長屋であるとして、安全認定処分を行い、これを前提に建築確認処分を行っている(弁明書6頁.5(2)())。すなわち、認定及び確認は、4階建(地上3階、地下1階、なお屋上にペントハウス)約30戸、2,800uの集合住宅(しかも、その形状は複雑なコの字型)を長屋と解釈しているのである。

 われわれは、本件建物は、規模、戸数、階数、延べ床面積、道路接続、駐車施設、給排水電気ガス設備等において「共同住宅」と認めるべきものであると繰り返し主張してきた。

 新宿区は、今回の弁明書22@(2)では、『「長屋とは、2以上の住戸を有する一の建築物で、隣接又は重ね合う住戸と内部での行き来ができない完全分離型の構造で、廊下・階段等の共用部分を有しない形式の建築物をいう。」とされており、「このことからも、本件建築計画は「共同住宅」ではなく、この形式にあたり「長屋」と容易に判断できる。」』としている。本件建物は、完全分離型で、共有部分を有しないから長屋だと、単純な形式論をいっているのである。

 申請人は、検討報告書の解釈を十分に承知している。しかし「2以上の住戸を有する建築物」といっているが、30戸以上の建築物を想定しているのか。50戸でも、100戸でも、500戸でもよいのか。出口さえ別であれば5階建てでも10階建てでもよいのか。その形状がいかに複雑なものであってもよいのか。検討結果報告の解釈には、防火安全性の観点からして自ら常識的な限界がある筈である

(2)建築基準法は、こんな規模形状の長屋が建つとは想定していない。完全な脱法行為であると考える。

 敷地環境によっては、完全分離型で共用部分を有しない設計が自然な場合もあろう。しかしながら、本件建築物の場合は、共同の廊下を設置して設計する方が極めて自然、かつ合理的である。にも拘わらず、本件建物は、建築基準法の不備をつき、無理に無理を重ねて、個々の住戸の出入り口を別個に設計している。法律の制約がなければ、こんな設計をするはずがない。明らかに、法律の抜け穴をこじ開けようとするものである。

(3)そもそも、建築基準法が特殊建築物として共同住宅を規制する趣旨は、防火安全性の確保にあり、本件建築物は、規模、構造、形状、戸数、階数などから見て、火災危険性においてなんら共同住宅と異なるところがないから、法律の趣旨に照らして、共同住宅と解するのが当然である(法律の不備は、趣旨目的解釈により補うのが法解釈の常道である)。

 因みに、建設省住宅局監修「詳解建築基準法」(同書355頁)を見ても明らかなように、建築基準法別表第1の特殊建築物2項は、病院、ホテル、寄宿舎等と共に、共同住宅を特殊建築物としているが、その趣旨は「就寝用途に供する建築物であるため、建築物災害に遭遇した際の安全避難を確保する見地から制限を課している用途の建築物である」というところにある。

 多数の就寝の用に供する部分が集合している場合における火災危険性の排除(特に避難安全性の確保)を建築基準法の規制で担保しようとしているのであるから、共同住宅も、本件の如き重層長屋と強弁する建築物も、法の規制の趣旨から見て何の変わりもなく、同様の危険性に対ししては同様の規制を行うべきことは明らかである。

 文理上の形式論によるべきでなく、法の趣旨、目的から共同住宅と解釈すべきである。

(4)実際に、かかる大規模な建物が長屋として新宿区内で建築された事例は、存在しない。申請人がかかる事例があれば示すよう何度求めても、新宿区からは何の回答もなされていない。

東京都都市整備局担当部局に問合せてみても、本件のような規模形状の建築物が重層長屋として建築された事例は聞いたことがないという。

 従って、もしこれが長屋と認められれば、建築行政上、本法初めてのこととなるのである。しかも、「袋の鼠」となるような敷地に建築するのである。驚くべき安全性無視の行政を新宿区は他区市町村に先がけて(本邦初演)執行しようとしている。果して、中山新宿区長は、かかる危険極まりない本邦初演の建築行政を十分に認識して執行なさっているのであろうか。

 (5)平成16年当時は、本件土地建物は、「現状有姿のまま」売りに出されていたのである(甲10号証)。即ち、不動産のプロである多くの業者が本件敷地には共同住宅は建てられないと考え、土地購入を見送ってきたのであり、新宿区が突然、長屋と認めたのは、業界にとっても、大方の予想(法常識)に反する出来事だった。

 

2 消防当局の判断に対するコメント

 

(1)新宿消防署は、本件建物に関する消防同意の際に、用途について「長屋と判定する」としている(平成18630日同意に係る建築申請調査書(1)(甲11号6枚目)。

(2)しかしながら、同消防署は、指導事項として@「避難器具を設置すること」、A「火災を各住戸へ早期に報知できるよう自動火災報知設備を設置すること」、B「防火管理者を選任し、消防計画を作成し、適正に防火管理すること」等を特別にあげている(甲11号7枚目)。

 これらの指導事項は、本来、本件建物が共同住宅であれば法律上の義務として課せられ、その違反に反しては罰則があるものである(消防法8条、17条)。

(3)これまで用途の判断については、消防当局は建築当局の判断に従うという慣行があり、本件の場合も、新宿消防署長は、やむを得ず新宿区建築主事の判断に従ったものと推察される。しかし、そのように従いつつも、消防の専門家として、本件建物が実質的には共同住宅と同様の火災危険性があると考え、やむにやまれず共同住宅なみの消防法令上の規制と同様の指導をせざるを得なかったのである。

 要するに、かかる指導を行う以上、消防当局は、本件建築物を実質的には共同住宅であると判断していると言ってよい。そうでないと言うなら、消防法令に基づき具体的に反論されたい。

 

3 まとめ

 

 以上述べたように、被申請人が本件建物を長屋として建築確認をしたのは、誤りであり、少なくとも建築基準法、消防法が制定当初から想定していなかったものであることは明らかである。

 従って、建築基準法上は、その趣旨目的からして素直に本件建物を共同住宅と解すべきである。共同住宅は特殊建築物となるから、建築安全条例10条の規定により本件建物を本件敷地に建築することは不可能となる。従って、認定及び確認は当然に取り消されなければならない。

 かかる本件建築物を強引に「長屋」として本邦初演し、かつ、新宿区行政手続条例に従い審査基準を設定して判断しないで本件安全認定をし、そして本件建築確認する。本邦建築行政上のあえて暴挙と言わなければならない。そうでないと言うなら、新宿区はよく分かるように、法と事実と証拠に基づきよく説明責任を果たさなければならない。

 

三 弁明書の5(2)()C及びG並びに弁明書22A後段に対する反論(路地状通路は道路と同じ機能を有するものとはいえない)

 

1 弁明書の5(2)()C及びGについて

 

1)前回の弁明書は、5(2)()Cにおいて「本件建築計画敷地が西側で接する道路(以下「前面道路」という。)から本件建築計画敷地の奥に通じる有効幅員4mの道路状の通路及びその終端部に消防活動空地が設けられており、本件建築物が道路に直接面しているのと同様な避難及び通行の安全が確保されている。」と、同Gにおいて「上記Cの通路は、建築基準法上の道路と同等の機能を有するものであり」などと主張している。

 推察するに、本件敷地内の35mを超える路地状敷地は実質道路であるから、本件建築物は直接道路に面しているようなものだといっているのだろう。

2)本件路地状敷地が道路位置指定できるものではない(従って、道路と同様の機能を有するものではない)ことは、反論書(1)4(2)に述べた通りである。

 さらに、建築基準法施行令第144条の4の規定に照し、道路に準ずるものといえるかどうか、論点を次の(3)の通り整理したので、申請人の前記主張にこの点を追加しておきたい。

3)建築基準法4215号の道路の基準に該当するためには、同法施行令144条の411号の要件を満足しなければならない。しかし、次の通りいずれも満足していない。

 @本件敷地の前面道路は、路地状敷地が接する場所(甲12号図面1Bの地点)から南へわずか行くと急傾斜面で行き止り(自動車通行不能)(同図Aの地点)となるから、当該前面道路自体もが「袋路状道路」(144条の41号本文)である。

 A本件敷地周辺における「両端が他の道路に接続してたもの」(144条の41号本文)は、新目白通りと目白通りと結ぶ道路(同図1Dの地点よりCの地点を経て目白通りに至る)である。

 B以上@及びAを前提に、同令同条同項1号の適用関係を検討すれば、次の通りである。

 a 同号本文の適用・・・該当しないのは明らかである。

 b 同号イの適用・・・「35mを超える本件路地状敷地に「袋路状道路たる前面道路」の延長(前面道路が他の道路に接する場所(同図1Cの地点)までの部分約120m)を加算すれば、約160mであり、35mをはるかにオーバーする。

 c 同号ロの適用・・・消防活動空地は、同号ロの公園、広場その他これに類するものとは到底言えない。

 d 同号ハの適用・・・35mごとに同号ハの自動車転回広場が設けられていない。

 e 同号二の適用・・・本件の場合全く該当しない。

 f 同号ホの適用・・・次に示す建設省住宅局監修「詳解建築基準法」(同書584)の解釈に従えば、本件の場合同号イからニまでと同等以上の条件が備わっているとはいえない。特に、甲12号図2に示すように、前面道路は、幅員2,79mから4m以下の狭小道路で、消防車の進入が不可能な道であることを考えれば、尚更のことである。

 「袋路状道路」については、上記「詳解建築基準法(573頁から585頁)、甲27」を参照されたい。

 C以上の通り、本件路地状敷地を建築基準法上の道路として建築基準法4215号の規定により特定行政庁から位置指定することはできない。従って、実質的に道路と同様の機能を有し、避難及び安全上支障がないものであるとは到底いえない。

 (4)前回の弁明書5(2)(ウ)では、「本件認定に当っては、敷地と道路の関係について適用を受けるものであり、本件敷地に至るまでの道路の形態及び状況についての適用まで受けるものでないと思慮する」などと主張している。

 反論書(1)3に述べたように、本件認定に当り条例4条3項にいう「周囲の状況(甲17号)」を勘案すべきであるから、上記主張はもとより当を得ないものである。加えて、上記(3)に述べたように、実質道路と同様の機能を有するかどうかの判定に当り、令144条の41号イの適用については、本件路地状敷地と袋路状道路たる前面道路を合わせて延長を判定することとなり、従って、本件敷地に至るまでの道路の形態及び状況についても十分に検討されなければならない。

 

2 弁明書22A後段について

 

(1)新宿区は、弁明書22A後段において、「前面道路から本件建築計画敷地の奥に通じる有効幅員4mの道路状の通路は、元より建築基準法上の道路ではない」と主張している。何故にかかる主張をするのか意味不明である。反論書第4(2)に対する弁明なのであろうか。

 とにかく、新宿区は、建築安全条例4条の解釈との関係で、上記主張がいかなる法律的意味を持つのか、そして、どうしてそれが避難・通行の安全につながるのか、具体的に説明しなければならない。

(2)そもそも、申請人は、条例41項の解釈に当り、35m以上の路地状敷地全体で、本件敷地が前面道路に接しているものと解している。新宿区も、同様に解したが故に、同条1項をクリアーできず、同条3項の安全認定を行った。(この点は、新宿区は前回の審査請求の際の弁明書でも認めている)

(3)それとも、新宿区は、前回の弁明書の5(2)()Cで「有効幅員4mの道路状の通路が設けられているから、道路に直接面しているのと同様だ」と主張しているから、本件敷地は路地状敷地の東端で道路に接していると解釈しているのだろうか。しかしそれでは、処分庁の建築基準法上の道路ではないとする前記主張と明らかに矛盾する。本件認定の法論理は、自らの矛盾主張によって、破綻が自白されている。

(4)申請人は、本件に関する建築安全条例4条の規定を次のように解釈する。

 @本件敷地は、「長さ35mをこえる幅員4mの路地状敷地」全体で前面道路に接している。

 A条例43項で安全認定を行うためには、「建築物の周囲の空地の状況」(建築物の敷地内に広い空地を設け場合の状況と解されている、甲17号)により、区長が「安全上支障がない」と認めなけらばならない。

 本件敷地の場合、消防車も入れない消防活動用空地と消防隊員が梯子をかけるスペースもない1,5mの通路(しかも崖に面し、傾斜地で歩行困難な可能性もある)しか存在しない。これでどうして上記のように「敷地内に広い空地を設けた(甲17)」といえるのか。

 その危険性(特に避難上の安全性の欠除)については、反論書(1)3及び第4で詳細に述べた通りであり、ここでは繰り返す必要はない。

 B加えて、上記1.で述べたように、本件路地状敷地(新宿区は、路地状通路は建築基準法上の道路ではないと主張する)は、建築基準法上の道路として位置指定する要件を備えておらず、「本件建築物が道路に直接面しているのと同様な避難など通行の安全が確保されている」ということは、論理破綻であり、明らかに新宿区の独断(判断誤り)である。

(5)新宿区は、本件建築計画が安全上支障がないと解釈するのであれば、これまでの弁明書のような論理破綻の独断的で、アバウト(大雑把)な説明をするのではなく、申請人が(4)で述べたと同程度に、条例41項・43項、令1444等の各条文の条項を引用し、文理的にも緻密に解釈し、少なくとも被申請人引用の解説書(乙2でない甲17)の基準に基づいて、よく分かるように法適合性について説明しなけれなならない。

 

四 弁明書22A前段に対する反論(避難空地が1,5mしかないことの違法性)

 

 @新宿区は、本件安全認定処分に当り、隣地との間に22,5mの避難空地を設けることを条件とした。前回の弁明書の5(2)()Aにおいても、「本件建築物と各隣地境界線との間には幅員2mから約4m避難の為の空地が設けられている(だから安全認定した)」としている。

 22,5mの避難空地では、「安全上支障がない」とは到底いえないことは、反論書(1)3及び第4に証拠をもって述べた通りである。現に渋谷区の審査基準(甲5)では、幅員3mの空地を最低条件としている

 A申請人が反論書(1)4において、実際には区長認定緑化計画(甲14の2)の植栽や傾斜地等により新宿区が安全認定の条件とした幅員22,5mの安全空地も満足していないと指摘したところ、驚くべきことに、弁明書22Aでは、「安全空地内には、避難・通行上支障とならない幅1,5mの通路が確保されている」と自らの認定条件すら満していない4条3項認定でよいと変更主張し、それでも安全上支障がないと強弁するに至った。もしそうでないと言うなら、証拠を示して、よく分かるように説明されたい。

 かかる新宿区のご都合主張は、安全認定の際の条件を建築確認の際にさらに危険側に変更するものであり、違法のうえに違法を重ねるもので、断じて認めることはできない。

 B本件建築物は1,000uをこえるから、建築基準法施行令128条が適用され、幅員が1,5m以上の通路を設けなければならない。新宿区は、ひょっとしたら、同条の規定を根拠に逆に1,5m幅の通路であれば、避難・通行上支障とならないと強弁しているのかもしれない。

 しかしながら、同条の規定は、一定の建築物(同令127)に原則的に適用されるものであり、本件敷地についていえば、かりに接道状況が建築安全条例41項に適合し、接道幅が8mあったとしても法律的に要求される通路幅である。

 条例43項の特例を適用するに当り、条例41項の原則を満足した場合の条件と同じでよいとすることは、原則と特例をいっしょくたにした暴論であり、明らかに法の解釈誤りである。すなわち、条例43項の特例を適用するためには、さらに他に適切な措置がなされ、総合的にみれば原則を満足した場合と同等以上の安全性が備わり、反論書(1)3及び第4で述べたように、「敷地内において広い空地を設けた状況(甲17)」を満足するものでなければならない。

 新宿区の特異性(本件認定の異常性)を指摘する甲18号新聞記事を見られたい。

 

五 弁明書の5(2)オ及び弁明書22Cに対する反論(消防署長の意見を踏えたとの主張の誤り

 

1 弁明書の5(2)オについて

 

 新宿区は、前回の弁明書5(2)オ(78頁)において、「建築確認処分に当り、消防署長の意見を踏えて、安全に配慮した」と主張している。しかしながら、同主張は、次に述べる通り、事実関係も、法律解釈上も、全くの誤りである。被申請人の審査会に対する、ミスリードの主張である。被申請人は地方自治法に基づく地方公共団体でありその主張は誠実でなければならない。

(1)消防署長の意見は、前回の反論書(12)において述べたように、「建築物と敷地の関係」について「消防活動困難地域」や「路地状敷地の狭さ」を指摘し、これまで例のない意見を述べたものである。しかるところ、同オ@〜Bは、建築物そのものの設備について新宿区が一定の指導をしたに過ぎないから、建築確認に当り、消防署長の特別の意見を踏えたものということはできない。虎の威を借る論理のすり換え(ミスリード)である。

(2)新宿消防署が開示した建築申請調査書(1)(甲11号証)によれば、建築物そのものに対する特別指導を11項目に渡って行っている。これと新宿区が指導した同オ@〜Bとの関係は次の通りである。

@オ@は、消防署指導事項4に対応している。すなわち、避難器具の設置は、新宿区も消防署も指導している。

 AオA・Bは、消防署指導事項11項目には入っていない。従って、防火戸、連結送水管については、消防署は何ら意見も述べず、指導もしていない。新宿区の独自の指導である。

(3)特に、新宿区は、「本件建築物の外周に連結送水管を設置する」ことを指導したといっている(具体的にどのように設置するのか明らかではないが)が、これは、消防同意に当り消防署長が指導したものではない(申請人の主張が納得できないなら、新宿区から新宿消防署に直接問われたい)

 そして、これが設置されたからといって、消火活動はある程度しやすくなる面があるかもしれないが、建築安全条例4条の目的、趣旨(1回反論書8頁)の最も重要な要素である「避難」がしやすくなるわけではなく、この設置をもって、路地状敷地が接道する際の原則の8mより狭くても安全上支障がないと認めることができないのは言うまでもない。

 要するに、連結送水管の設置は、接道幅につき特例を認めるための代替手段とは、およそ認められない。

(4)要するに、「消防署の指導により、連結送水管の設置等をもって、この地域の安全性が確保されている」と新宿区は主張しているようだが、消防署はそのような指導をしておらず、しかも、そのことにより実際に避難の安全性が確保されることはない。新宿区は、事実に反することを述べ、本審査会に対しミスリードが疑われる。新宿区は、証拠を示して、よく分かるように具体的に説明しなければならない。

 

2 弁明書22Cについて

 

(1)新宿区は、弁明書22Cにおいて「消防署長の意見については、本件建築計画の安全性を消防活動の面から向上させるため、消防署長が建築主事に建築主への指導を依頼したものであり、法第93条第1項の建築確認処分の際の消防署長同意の条件ではない。このことは、消防署長に確認している。」としている。

 申請人は、もとより新宿区と新宿消防署の間の文書のやり取りは十分に承知している。

(2)消防署長の意見にの意味合いについては、反論書(1)12頁において述べた通りであり、ここでは繰り返す必要はない。消防署長は、建築物と敷地の関係について審査する根限がないから、消防同意の条件でないのは当然である。

 むしろ、東京消防庁新宿消防署が消防同意に当りこれまで例のない特別の意見を付したところに、本件処分の危険性が浮ぼりになったと考えるべきである。新宿区長・建築主事がそう考えなければ、それは通常の判断でないと考える。

(3)要するに、新宿区が前回の弁明書の5(2)オのような指導をしたからといって、また、消防署長から条件がつかなかったからといって、「安全上支障がない」といえないことは、反論書(1)の第2から第4まで及び上記1に詳細かつ具体的に述べた通りである。弁明書2には、これらの反論に対する弁明が何らなされていない。

 

3 新宿区議会質疑に関するコメント

 

(1)平成189月定例会(3)(920)において、小野きみ子議員が本件建築計画の問題を質問したのに対し、平山都市計画部長は、「消防署の指導により、建物外周部に連結送水管を設けており、ご指摘の地域の安全性は十分確保されていると考えております」と答弁している(同定例会議事録122)

(2)しかしながら、事実は上記1.で述べた通りである。平山都市計画部長が事実に反することを議会で答弁するということは、どういうことなのか。本件認定・確認が新宿区の独断の処分であったことが自認されている。平山部長の責任まことに重大と言わなければならない。

 

六 弁明書2の5(1)「一つの建築物」反論

 

 令1条1号違反

 1回反論書26頁参照。

 @敷地に用途可分の三棟の建築計画は、新宿区長認定緑化計画書甲14号(敷地図面)のとおり東棟、西棟、南棟の独立した三棟の建築計画で、一目明らかである。

だから、処分庁は「東棟を東側建築部分、西棟を西側建築部分、南棟を南側建築部分」などと、棟(建物を数える語、広辞苑)を建築部分と言い換え(その言い換えの意図は明らかだ)、甲14号図面に一見明らかに反する主張をして、審査会に対してミスリードが疑われる。

 A「具体的審査基準」を設けないでした独断判断

  令1条1号は、「敷地 一の建築物又は用途不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。」と規定しており、判断基準として極めて抽象的規定であるから、透明性(行政上の意思決定について、その内容及びその過程が区民に明らかになること)のある適格な判断をするためには、行政庁は行政手続法5条により出来る限り具体的な審査基準(用途不可分の関係等)を定めなければならない。

上記審査基準義務違反は、独立の処分取消原因となる(前記7頁(5)参照)。

 B甲15号証

用途可分の建築物をエキスパンションジョイントで接続させても、一つの建築物ということはできないとして、違法とし確認を取消した東京都建築審査会裁決及び東京地裁判決は、次のとおり説示している。

 「エキスパンションジョイントは構造体を物理的に分離しておく方法によって、力学上応力を伝えないことにより、構造体が相互に影響を及ぼさないことを意図する接続方法であり、これによって接続部分間に応力を伝えるものではないから、むしろ構造的には分離されているに等しい状態なのであって、したがって、それだけでは、機能上、構造上及び外観上の一体性がある『一の建築物』ということはできない。」

 C弁明書2の5(1)は、「本件建築計画はエキスパンションジョイントを設けたものである。本件建築物は一つの建築物であることは容易に判断できる」などと主張している。どうして、透明性のある適格な判断するための審査基準を設けることもなく、「東棟、西棟、南棟」の独立した三棟の建築物(甲14)を、「東側西側南側部分」などと言い換えると、一つの建築物であると容易に公正かつ透明性のある判断できるのか。処分庁がそう独断しているだけではないのか。

 

七 弁明書2の4について反論

 

 手続法・手続条例1条は、行政運営の透明性「行政の意思決定の内容とその過程が国民(住民)にとって明らかであること」と、定めている。

@金子建築主事は法6条4項の確認済証を交付できない疑義がある旨、文書で通知した(甲2)。この文書は重要公文書である。重要公文書の内容にかかる資料は新宿区文書管理規程に従い官署に保存されなければならない。

A建築主は住民説明会で、南側擁壁の構造耐力性について確認調査をし、その結果(擁壁調書)に基づいて、南側がけの安全を図ると説明していた(甲25号証の1ないし3参照)。1回書面第11記載参照

B新宿区は本件全情報783枚中751枚(95.9%)を非公開決定した(甲18号証)。

Cそれで、申請人は1回反論書第11(34頁)で全証拠の提出を求めた。

Dこれに対し、処分庁は全く釈明に答えず、具体的反論もしない。かつ乙1ないし10号証以外証拠は出す考えはないと強弁した。そして、申請者が修正又は差し替えた申請書を審査し適合を確認したから、金子主事が疑義があると文書で通知した確認処分に違法性はないと強弁する。

E処分庁は申請人の主張を読んでいないようだから、労を惜しまず再説する。

 

『@本件建築確認申請について、金子博建築主事(以下、金子主事)は、以下のとおり令1条を除く本件法令適合性について、法6条4項の確認ができない「疑義がある」旨、建築確認申請人に対し通知している(甲2号)。

 本件建築確認申請の法適合性の判断権限を有する肝心要の新宿区建築主事が、法適合性について各法令を摘示して、疑義があるとしているのである

 A申請人住民にとって 法適合性の判断権限を有する新宿区建築主事が各本件法令を摘示して疑義があるとする建築物が建築されることは、由々しきことである。それはそれは由々しきことではないのか。申請人住民は建築主事が各法令を摘示までして、疑義がある建築物が建築された場合、どんな重大な危険・損害が惹起されるかもしれないと危惧して、本審査請求をしているものである。

 B金子主事が各疑義があるとする具体的内容については、申請人住民でなく、金子主事に確かめられたい。同疑義に関する資料は全て新宿区建築主事側が保持している(32頁A最判を見られたい)。疑義の内容を具体的に判断してそれを通知した金子主事に確かめれば、すぐ、わかる(甲7号参照)。申請人に聞くまでもない。申請人に具体的内容を明らかにされたいと主張するのは、責任転嫁これ以上のものはない(32頁B大阪地裁判決「行政庁の主張立証責任」を見られたい)。

 Cもし、その後、金子主事が摘示した本件法令の各違法性が、修正されて、適合性が新井建也建築主事(以下、新井主事)によって確認されたとするなら、少なくとも新井主事は金子主事が各法令を摘示してその法適合性について疑義があるとした、その具体的内容を明らかにされたい。明らかにしないなら金子主事の陳述を求める。かつ、新井主事はそれがどのように修正されて法適合性を確認したのか、具体的に申請図面、修正図面等を証拠提出し、よく分かるように説明(主張立証)すべきである。それとも、そんなことは必要ないと主張するのか、明確に申請人住民に答弁されたい。

 D新井主事が「金子主事が通知した疑義ある事項は修正又は図面の差し替えなどにより法適合していることを確認したから確認済証を交付したものであり、なんら違法性はない」「行政手続条例に違法性があるとの主張に関しては建築法令による処分又は不作為に該当しない」と主張すれば、法適合となるのなら、建築審査会の審査は全く必要ない。主張立証責任は全く必要ない。裁判(32頁A最判B大阪地裁判決)は全く必要ない。

  被申請人の同主張は法治行政を全く否認するものと言わなければならない。

 E一回反論書30頁(2)金子主事の応答(甲7号)参照。 』

 

Fその上、処分庁は「犯罪予防のため」等を事由として、本件全情報783枚中、実に751枚95.9%の非公開決定し、金子主事が疑義としてその意思決定の内容とその過程が明らかになることを遮断した。

G新宿区の金子建築主事が文書で法適合を確認できないとする疑義を通知したのである。もし、それが解消されたのなら、どう解消されたのか、裁判ではもとより、審査会及び住民に対し、手続法1条を頼るまでもなく、証拠を示してよく分かるように、説明をすべきである。そこのところ、「修正前、差し替え前の書類(証拠)は新宿区にはない」と堂々と強弁する。

 金子建築主事の疑義通知は重要公文書である。重要公文書の内容にかかる資料は新宿区文書管理規程に従い官署に保存されなければならない。これ以上の行政手続法・手続条例1条違反を知らない。新宿区文書管理規程が疑われる。

Hそして、前記B本件情報を非公開決定して、「申請人が各処分の違法性を主張するのであれば、請求人はその違法性を主張する部分や内容などについて具体的に示すべきである」などと自らの立証責任と行政運営の公正透明性確保責任を棚に上げ、驚くべき責任転嫁を強弁した。これ、果たして地方公共団体の正しい法の適用と正義の主張であろうか。

 

八 弁明書2の5(3)(4)(5) について反論

 

@標記については、金子主事が各疑義があると文書で通知している。

A申請人は反論書第7の2ないし6で「金子主事の疑義について文書により各具体的内容を明らかにされたい。各修正されたのなら、どのように法適合性を確認したか主張、立証されたい。各具体的審査基準を明らかにされたい。」と、明確に主張した。

B而して、処分庁は適合と確認したから適法だと主張するだけである。処分庁は裁判でも同じ主張をするのだろうか。

 

九 弁明書2の5(2)について反論

 

 標記については金子主事が文書で通知した疑義について、「適法を確認した」「違法性はない」との主張すらしない。金子主事の文書で通知した疑義は修正されず現在も存していることが自認されている。

 そして、エキスパンションジョイントを設けた三の建築物について、東京都建築審査会裁決及び東京地裁判決を知ってか知らないか、「申請人の主張は失当だ」と言い放っているだけである。

 処分庁は申請人の主張を読んでいないようなので、労を惜しまず再説する。

 処分庁は申請人の主張に、上記都建築審査会裁決・東地判決に基づき、具体的に証拠を示して反論しなければならない。

 

『@「地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が3メートルをこえる場合においては、その高低差 3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう(建令2−2)。

 A地盤を算定する領域の設定については、原則として建築物が地面と接する位置の最高点又は最低点から3mごとに行う。ただし敷地や建築物の形状により、この方法によることが不合理である場合には、3m以内の適切な高さにより領域を設定することとされている。

 B本件敷地は北側から南側へ傾斜している斜面地であり、北側境界地点と南側境界地点では5メートル以上の高低差が存在する。しかも、本件建築計画は、東棟・南棟・西棟と称される用途も構造も分離独立した3棟の建築物が存在する建築計画である。これらの3棟の建築物が周囲の地面と接する位置の高低差は3mをこえないとしても、東棟・南棟・西棟と称される3棟の建築物ごとに地盤を算定する領域を設定することが法適合性がある。

 C東棟・南棟・西棟と称される3棟の建築物ごとに地盤を算定する領域を設定して平均地盤面を算定すると、南棟の平均地盤面は申請平均地盤面(設計GL)より1メートル以上も低い位置になる。この場合、南棟の建築物の最高の高さは10メートルをこえることは明白であり、本件敷地に定められた第一種低層住居専用地域における建築物の絶対高さ制限に大きく違反することになる。

 D日本建築主事会議会長事務連絡(H7・5・22)「高さ・階段の算定方法・同解説」を見られたい。』

 

十 「その他疑義」

 

 金子主事は「その他」法適合性について疑義があると文書で通知している(甲2号証参照)。申請人は「その他疑義」の具体的内容を明らかにされたいと主張している(1回反論書25頁)。而して、処分庁はこれに全く頬被りして、「その他疑義」について「適法を確認した」「違法性はない」との主張すらしない。

  金子主事の文書で通知した「その他疑義」は修正されず存していることが自認されている。これだけでも、十分な処分取消原因である。違うのならよく分かるように説明されたい。

 

十一 弁明書2(7)安6条2項(がけ・擁壁)について反論

 

 新井建築主事が、南側既設擁壁について「安6条2項の構造耐力上支障がない安全性」の法適合性を確認しないで、確認済証を交付した事実については、1回反論書第8・第9・第11及び後記第6のとおりである

 

(1)既設擁壁

 

 申請人は既設擁壁の危険性について1回反論書(27頁)で具体的に詳述している(処分庁は申請人の反論を読んでいない疑いがあるので、労苦をいとわず、末尾に再説する)。

 処分庁はこれに対し、全く、認否せず、かつ具体的反論をしない。何の証拠も付していない。処分庁は申請人の主張に証拠を示して反論しなければならない。

@弁明書は「既設擁壁について、処分庁が現地調査をして、確認し、背面側に既存擁壁保護用鋼製山留を設けることとしている。

 そして、底版突出がないものと仮定し、試掘調査をして山留の位置・根入れの深さを確定するものとし、安6条2項2号適合の構造耐力上支障がないと認めた」と主張する。

Aそれでは、上記認めた根拠とした イ 処分庁がした現地調査結果、ロ 安全対策を記載した本件確認申請書、ハ がけ・擁壁の調査票、二 建築主がした現地調査結果(処分庁がした現地調査と同じ調査か否か不明)を各証拠提出されたい。弁明書2の主張で、どうして、安6条2項2号の法適合性が確認できるのか、主張からは全く分からない。主張自体、判じ物である。これでは、申請人の具体的主張に対し、何の反論にもなっていない。

B安6条2項2号の具体的審査基準を定めないで、弁明書2の主張で、どうして、公正かつ透明性のある同法適合性が判断できるのか、主張からは全く分からない。よく分かるように説明されたい。

C安6条2項2号の法適合性を確認するには、構造耐力上支障がないといえる数値を定めた基準を定め、同擁壁の確認調査を行って、初めて公正かつ透明性のある判断が可能になるのである。

D法6条4項は「審査の結果に基づいて規定に適合したことを確認したときは」確認済証を交付すると規定している。而して、弁明書の主張は、証拠を提出せず、擁壁の状態を仮定し、後の試掘調査を行政指導し(図面番号25以下)、その結果によって建築主事と協議するというものである。

 既設擁壁の状態は確認調査していないから仮定するしかない(確認調査してあるなら隠さずに証拠提出されたい)、後の試掘調査が実施できるかどうかも分からない、その結果は調査してみないと分からない、何もかも分からないまま、本件確認済証を交付したことが、自認されている。処分庁が適合を確認したから適法な確認だと処分庁がそう言っているだけだ。

E後記第6「建築確認済証」の違法な交付参照。

 

『既存擁壁

 @高さ2メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の二倍以内のところに建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合は、高さ2メートルを超える擁壁を設けなければならない。ただし、既設の擁壁に構造耐力上支障がないときは、その既設の擁壁を利用することが出来る

 A本件の敷地南側境界(ホ断面)は2メートルを越えるがけになっており、高さ2.17mの既設の擁壁が存在する。その既設の擁壁を構造耐力上の調査確認を済ませないまま、安全条例6条に規定する擁壁として既存利用することを前提にして工作物確認申請をした。

 B確認図面番号25には「確認申請後、着工前に試掘調査を行い既存底版をはじめとする既存擁壁の状態を確認する。調査結果に基づき、鋼製山留めの位置及び必要性について検討し、安全性を確保する。また建築主事との協議を行う。*試掘箇所は3箇所とする」と記載がなされている。

 Cしかしながら、現在に至るまで現地での試掘調査が行われた事実は確認出来てはいない。そもそも、安全条例6条の趣旨は既設擁壁の構造耐力上の安全を検証し、調査および検証データをもとに構造耐力上支障がないことを示して安全性を確認するべきものでる。条例の趣旨を無視して、調査も行わず調査結果もない時点で既存擁壁の保護対策を検討し、建築主事と協議を行ったとしても既存擁壁が構造耐力上支障がないとの判断は不可能である。にもかかわらず安全条例6条に基づく工作物申請では既設擁壁に構造耐力上支障がないとして既存利用することとし、新井建築主事はこの安全確認の審査(安全性の確認)を怠ってこれに確認を出してしまった。これは法6条4項に明らかに違反し、申請人及び建築主事の重大な違法行為である。

 Dしかも、事後調査と建築主事との相談で安全確保の事後対策を形式上申請図書に示している既存擁壁保護用鋼製山留は、既存擁壁の底版を分断破壊し、がけ土中に埋設するものであり、かえって既存擁壁の構造耐力を低下させる可能性が大きく、安全性確保とは程遠い実現不可能なものである

 Eそして、この既存擁壁の南側隣地には木造住宅が接近して建っており、隣地住民によると、この既存擁壁は築造後50年以上経過していて、経年劣化と見られる多数のひび割れ発生や擁壁表面からの漏水現象も散見される状況であり、本件開発により崩落の危険も少なくなく、隣地住民は不安を抱えている。

 F本来、区民の安全確保を第一義的に建築行政を任されている新宿区建築主事は、このように安全条例6条を否認し、現地調査、審査、検証をしないまま違法な確認申請を確認したことは、法6条4項に丸ごと違反する違法無効がある。

 G同反論書第9・第11参照  』

 

(2)新設擁壁

 

@申請人は新設擁壁について1回反論書(28頁)で、具体的に詳述している。

 処分庁はこれに対し、全く、認否せず、具体的反論をしないで、何の証拠も付していない。

A処分庁は申請人の反論を読んでいない疑いがあるので、労苦をいとわず、再説する。

 

『新設擁壁

 @本件敷地南東側隣地部分(ニ断面)は5メートル以上の高低差があるガケである。高さ3m近い既存擁壁があり、その上部は本件敷地の急傾斜部分になっていて本件に関する解体整地以前は3段のコンクリートブロック積の土留めが存在していた。

 A本件工作物確認申請では、隣地の高さ2〜3mもの既存擁壁が過小に扱われており、この既存擁壁に影響ないかの如くに新設擁壁が計画されているが、現状と比較して、この申請図書には誤りがある可能性がある。

 Bまた、この既存擁壁がある土地の部分は、本件敷地には入っておらず、いわゆる未買収地である。しかも既存擁壁部分だけの過小な一筆の土地であり本件敷地にとっては隣地扱いになる土地としている。この土地を含めたガケは高低差5m以上にもなり、この土地の部分を敷地にしてしまうと安全条例6条で規定する新設擁壁は現計画よりかなり過大なものになるべきである。

 C現状は本件敷地と既存擁壁とは境界線をはさんで一体となり5m以上のガケを構成していて、本件敷地及び周囲の安全確保のためには、新設擁壁の安全性確認とともに既存擁壁の構造耐力上支障がないことを確認しなければならない。しかしその安全確認の、調査、検証、審査はなされていない。』

 

B申請人の主張に対し、弁明書は「本件建築物が完了した後の本件敷地の状態における新設擁壁の安全性を構造計算により確かめている。水抜け突や裏込め砂利を設ける。だから、法適合していることを確認した。」と主張する。それでは、確かめたという、同構造計算を具体的に明らかにされたい。

 これでは申請人の具体的主張に対し何の反論にもなっていない。これで、かつ、何の証拠を示さず、法適合性を確認したというのである。処分庁がそう独断しているだけではないか。

 

(3) 石積擁壁のやり替え

 

@申請人は石積擁壁について1回反論書(29頁)で、具体的に詳述している。

 処分庁はこれに対し、全く、認否せず、かつ具体的反論をしない。何の証拠も提出しない。

A処分庁は申請人の反論を読んでいない疑いがあるので、労苦をいとわず、再説する。

 

『石積擁壁のやり替え

 @本件敷地の西南側境界部分(ヘ断面)のガケについては、擁壁のやり替え、つまり擁壁を新設するとしているが、高さが2mを超えないとして安全条例6条の規定の対象外の扱いにしている。

 Aしかし、現況は境界線をはさんで隣地側には古い石積擁壁が複雑な曲線となって連続している。高さは2mを超える部分もあり、石垣の上部や石の間からは多くの樹木が繁殖し積み石がずれたり石垣が崩れそうな箇所も見うけられ、工事の振動などで崩落の危険が極めて高い状況にある。

 B擁壁のやり替え、つまり新しく造り替えるには石垣がある隣地の土地所有者、住民の理解、協力が不可欠である。隣地住民に全くの説明もなく、その理解、承諾も得られない状況において、擁壁のやり替えは実現不可能なことであり、それを行政指導することは行政手続法32条ないし35条に明らかに違反する。確認のためだけに描いた、まさに体裁をつくろうための「絵に描いた餅」である。』

 

 申請人の主張に対し、弁明書は「2m以下の箇所はRC造を新設し、2mを越える箇所は本件建築物と一体なRC造に作り替える。本件建築物が完了した後の本件敷地の状態における安全性を構造計算により確かめている」

 それでは、確かめたという同構造計算を具体的に明らかにされたい。証拠提出されたい。

 これでは、申請人の具体的主張に対し何の反論にもなっていない。これで、かつ、何の証拠を示さず、法適合性を確認したというのである。処分庁がそう速断しいるだけではないか。

 

(4)乙10号証

 

 行政手続法1条は、行政運営の透明性を向上させるため、行政上の意思決定について、その内容及びその過程が国民にとって明らかでなければならないと規定している。

 而して、処分庁は既設・新設擁壁及び石積のやり替えの適合性証拠として乙10号を提出している。そして、乙1なしい10号以外、証拠提出する考えはないと強弁している。

@乙10号には、各字、線など読めない、見えない箇所がある。

A乙10号(14枚)の各証拠説明を求める。

 乙10号(14枚)の各立証趣旨を求める。

 裁判立証では、当然のルールである。

B申請人の主張に対し、具体的な反論も一切しないで、どうして、証拠説明し立証趣旨を主張しない乙10号証を提出すると、申請人の違法主張が理由がなくなり、本件建築確認処分が適法になるのか全く分からない。具体的によく分かるように説明されたい。


 

第6「建築確認済証」の違法な交付

 

 本件建築確認済証の交付は、法6条4項規定の法適合性を確認しないでした確認済証の交付である

 1回反論書25頁・27頁以下・30頁・34頁参照。

 @法6条4項は、「申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない(確認できないときは、確認済証を交付してはならない)」と規定している。

 A「安6条2項但書(2号) がけ又は既設の擁壁に構造耐力上支障がないとき」は、法6条4項規定の建築基準関係規定である。

 B従って、建築主事は安6条2項但書について公正かつ透明性のある法適合性を判断する具体的審査基準(数値を定めたもの)を定め(前記6頁)、南面既存擁壁の構造耐力上の安全性について確認調査を行い、その調査結果に基づき、その法適合性(既設擁壁に構造耐力上支障がないこと)を確認したとき、法6条4項規定の確認済証を交付できるものである。同確認できなかったときは、確認済証を交付してはならないのである。

 C而して、建築主は、「新宿区の指導に基づき南面既存擁壁の確認調査」を18年7月31日付確認済証交付の6か月後の19年1月22日から31日にするので、関係付近住民に対し、「何卒ご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げます」との文書を通知した(甲21)。

 Dすなわち、新宿区(建築主事)は建築主に対し、上記の南面既存擁壁の構造耐力上の安全性について確認調査の実施とその調査結果の報告について行政指導(手続法32条ないし35条)をしたのである(確認図面番号25左下参照)。

 E金子建築主事は既に安6条2項但書(南面既存擁壁の構造耐力上の安全性)の法適合性について疑義があると、建築主に文書で通知していた(甲2号)。

 F関係住民は既に建築主に対し、本件建築に強く抗議し、本件南面既存擁壁の確認調査について一切承諾(協力)しない旨、文書で通知していた(甲20号)。

 G以上の事実に従えば、建築主は本件南面既存擁壁の構造耐力上の安全性について「確認調査」をしないで、本件建築確認申請をしたことは明らかである。

 建築主が建築紛争条例に基づく住民に対する説明(同確認調査はこれからする)のとおりであった(甲25、1回反論書30頁34頁35頁参照)。

 H以上の事実に従えば、新井建築主事は本件南面既存擁壁について、安6条2項但書(2号)の法適合性(構造耐力上支障がない安全性)を確認しないで、本件建築確認済証を交付したことは、明らかである。

 Iすなわち、本件建築確認済証の交付は法6条4項規定の建築基準関係規定の法適合性を確認しないでした、確認済証の交付である。

 Jすなわち、本件建築確認済証の交付は明らかに法6条4項に違反する違法交付である。すみやかに取り消されなければならない。

 K行政手続法35条1項は「行政指導に携わる者は、その相手方に対し、イ当該行政指導の趣旨、ロ(その)内容、ハ責任者を明確にしなければならない」と規定している。35条2項は行政指導についてその文書の交付を規定している。

 被申請人は速やかに、本件行政指導の「趣旨、内容、責任者」を明らかにされたい。行政手続法1条は、「行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること」と、法定している。


 

第7 行政運営における透明性の侵害

 

 処分庁は、本件処分(認定処分・建築確認処分)の意思決定について、その内容及びその過程を国民(区民)にとって明らかになることを恐れ、その内容及びその過程が明らかになる情報を隠し、かつその内容及びその過程について誤導(行政手続法・手続条例1条違反)を図った強い疑いがある。これは、本件処分の法適合性を強く疑わせる十分な事実である。

 @処分庁は、本件認定処分の証拠として、区民にとってその意思決定内容とその意思決定過程が一見して分かる甲4号(1ないし3)を証拠提出しないで、それが分からない乙1号を証拠提出した(1回反論書6頁以下)。

 A処分庁は、本件認定処分の基準と主張して解説書(乙2)を引用し同証拠提出したが、肝心要の安4条3項規定の「建築物の周囲の空地の状況」、「土地の状況」、「周囲の状況」についての解説部分(甲17)を省いて、証拠提出した。

 B処分庁は、本件処分(認定処分・建築確認処分)の意思決定について、その内容及びその過程が区民に明らかになる情報751枚について、「犯罪予防のため」等を事由として、請求人によるその開示請求に対し、拒否処分した(甲18)。新宿区長は区民に、全情報783枚中、実に751枚、全情報の95.9%を非公開処分にしたのである。新宿区長はこれを公開するといかなる犯罪を惹起させるのか、区民に明らかにしなければならない。

 C金子建築主事は本件建築確認申請について、6事項その他事項について疑義があると、建築主に文書で通知していた(甲2)。

 D申請人は本申立及び1回反論書において、同疑義(法6条4項規定の法適合性)について、処分庁は主張立証責任があると主張し、その全部の証拠提出を求めた。

 Eこれに対し、被申請人は「本件処分(法適合性)の主張立証責任は争う」と主張し、かつ、「これ(乙1ないし10号証)以外、処分庁から証拠提出する考えはない」と強弁した。

 F以上は、区長・新井建築主事は本件処分の意思決定について、その内容及びその過程が区民に明らかになることを恐れたと疑わざるを得ない。

 G以上は、本件処分の違法性(法不適合性)を強く疑わせるに十分である。

 H申請人は、真に止むを得ず、東京地方裁判所に対し、18年11月14日付前記非公開決定処分について取消の訴をした(甲19号証)。

 すると、新宿区長は非公開決定したときから、間もない19年1月17日付で、先に「犯罪予防のため」等を事由にして非公開処分した751枚全部を公開すると処分変更決定した(甲22)。

以上は、

@住民に対し、本件処分の意思決定について、その内容及びその過程を知られないようにする十分な事実である。

A本件処分(安全認定処分・建築確認処分)の法適合性を強く疑わせる十分な事実である。

B住民に対し、いたずらに多大な費用と時間をかけさせ、かつ、苦しませる十分な事実である。

C地方自治法に基づく地方公共団体の役割(自治法1条の2、住民の福祉Welfareの増進を図ることを基本とする)に悖る十分な事実である。

 新宿区長及び建築主事の責任(自治法138条の2・手続法条例1条)は誠に重大である。

申請人(代表鴇晃秀)は、「美しい日本」は「安全で美しい地域」から成るものと堅く信じて、本請求をしている。

 申請人は、本審査会に対し、公正な審理と判断を上申いたします。


 

第8 証拠提出

 

 甲8号 新宿区行政手続条例

 9号 特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例

 これにより、東京都安全条例は新宿区行政手続条例2条規定の条例に該当する。

 10号 本件土地が現状有姿のまま売り出されていた事実。共同住宅としての分譲販売が不可能であると多くの業者は考えていた。

 11号 新宿消防署の建築申請調査書

 12号(図面1、図面2) 敷地周辺の地域図

 13号「1.5mしか空地がない。これでは特例認定の条件に満たない。避難路上に樹木、他区渋谷区では特例条件(審査基準、甲5号)を明確に定めた、周囲に3m空地を設けなければならない。他区の規程とズレも」(新聞記事)

 14号 本件建物は、@東棟、A西棟、B南棟からなる用途可分の各独立した三棟の建築物であること(緑化計画書認定図面)

 15号 用途可分の建築物をエキスパンションジョイントで接続させても一つの建築物ということはできないとして、違法とし確認を取消した東京都建築審査会裁決及び東京地裁判決は、次のとおり説示している。

 「エキスパンションジョイントは構造体を物理的に分離しておく方法によって、力学上応力を伝えないことにより、構造体が相互に影響を及ぼさないことを意図する接続方法であり、これによって接続部分間に応力を伝えるものではないから、むしろ構造的には分離されているに等しい状態なのであって、したがって、それだけでは、機能上、構造上及び外観上の一体性がある『一の建築物』ということはできない。」

 16号 逗子市のマンション建設について、県の開発許可図面に比べて地盤強化が不十分とした確認取消判決(横浜地裁)

 17号 東京都安全条例解説(乙2号証と対比されたい)

安4条3項(@建築物の周囲の空地の状況・A土地の状況・B周囲の状況)について、新宿区長が弁明書で引用する解説書は次のとおり解説している。

@「建築物の周囲の空地の状況」とは

 建築物の敷地内において広い空地を設けた状況などをいう。

A「土地の状況」とは

  建築物の敷地が公園などの土地と接続している敷地外の状況をいう。B「周囲の状況」とは

 建築物の敷地周囲の市街地状況をいい、道路状況や建築物の密集の 度合いなどの地区特性の状況をいう。

 上記@ABは安3条について解説であるが、4条3項にそのまま当てはまるものである。そこのところ、被申請人弁明書引用の乙2号証は、なぜか同解説部分を、省いて証拠提出している。何故、省いたのか。この部分を証拠提出すれば、同解説にすら従わない認定であったことが(これについては申請人は1回反論書第3・第4で証拠を示し詳述した)、露呈するのを恐れたのであろうか。本件認定書(甲4号)と異なる乙1号認定書の証拠提出(1回反論書6頁(5)参照)と、よく対応している。法は行政運営における透明性(行政の意思決定について、その内容及びその過程が住民に明らかになること)の確保と公正な行政に努めなければならないと規定している。

 以上は、処分庁による審査会に対するミスリードが強く疑われるものである。

 18号 新宿区長の非公開決定通知

 「犯罪予防のため」等を事由として、全情報783枚中、実に751枚95.9%を非公開決定した。

 19号 新宿区長の非公開決定処分(18号)について取消の訴

 20号 18年3月20日付住民が建築主に対し、「南面既存擁壁」の確認調査について一切承諾(協力)しない(そのための立入の拒否)を通知した文書。

 21号 18年12月28日付建築主が住民に対し、「新宿区の行政指導により南面既存擁壁の確認調査をしたいので理解と協力」をお願いした文書。

 22号 新宿区長が前に非公開処分決定した情報751枚について公開決定した通知文書。

 上記取消の訴(甲19)の後の変更処分である

 23号 中野区の安4条3項認定の審査基準

 24号 豊島区の安4条2項認定の審査基準

 25号の1ないし3

 紛争条例に基づく説明会議事録、1回反論書第11(34頁)参照。

 26号の1・2

 行政手続法違反(審査基準不設定)による処分取消判決

 27号 袋路状道路(令144条の4、1号)についての公式解釈(建設省住宅局)

 

 

 

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