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屋敷森の建築計画遅延と「新宿区みどりの条例」

 

 現在、周辺住民のみなさんが、特例安全認定をめぐって東京地裁で係争中ですが、建築計画が遅延していると思われる理由のひとつに、新宿区みどりの条例Click!の存在が挙げられます。「下落合みどりトラスト基金」ではこの条例の内容をもとに、屋敷森の重層長屋建築計画ケースに当てはめて検証してみました。

 

 「みどりの条例」の第1条には、「この条例は、新宿区をみどり豊かなうるおいと安らぎのあるまちにするため、区、区民及び事業者が協力して、今あるみどりを保護し、新しいみどりを育成することにより、景観に配慮した良好な都市環境の形成を図り、もって健康で快適な都市生活を確保することを目的とする。」・・・とあり、新宿区におけるみどりの大切さを提唱しています。事業者は、この条例にもとづき「緑化計画書」を提出し、それが認められれば建築確認申請の段階に進むことができます。屋敷森の建設計画に関連する主な条例の項目は、第11条の「既存樹木保護」と、第18条にある「1. 接道部分(道に面した部分)の緑化、2. 地上部分の緑化面積確保、3. 屋上部分の緑化面積の確保」です。

 当初の計画では、既存樹木はほぼすべてが伐採され、地上部分や屋上部分の緑化面積も確保されていませんでした。その後の設計図でも、数本の樹木が残されるのみとなっています。問題は、仮りに既存樹木を残し、地上部分の緑化面積を確保しようとすると、今度は避難路が妨げられてしまうという矛盾点にあります。本来、すべて更地の状態(既存樹木の全伐採計画)で、「東京都安全条例」の「特例」認定を受けることができたわけですから、改めて「みどりの条例」にもとづき既存樹木を残すとなると、敷地周囲の条件が変化することになりますので、業者は再び安全認定を取り直さなければならないおそれが出てきます。

 事業者は説明会において、「最大限の利益を得るのは当然であり、計画縮小は減収に直結するのでありえない」・・・とコメントしつづけてきました。しかし、現状の計画のままでは、「緑化計画書」認定は困難が予想されます。したがって、第18条にある「ただし、敷地使用又は周囲の状況その他の理由によりこの基準の適用が困難であると区長が認めたときは、これを緩和することができる」の条文に“期待”し、更地化して緑地がないぶんを芝や低木による屋上緑化で代用するなどの方法で、無理やり計画を申請することも予想されます。これでは、従来の原生巨木で占められた屋敷森とは、まったく異質の環境になってしまいます。中山新宿区長は「特例」を行使して、再び認定を行うのでしょうか?

 「新宿区みどりの条例」は、もともと安全性のテーマを含んだ内容ではないようですが、屋敷森の建設計画のように避難路が1方向しかなく、避難路自体も規定幅の半分というきわめて特異なケースでは、建物を縮小してみどりを確保することが安全面からも非常に重要な担保になると思われます。万が一、現状の計画のままで火災が発生しますと、消火活動の遅延とそれによる周囲への延焼により、大き惨事になること予想されますClick! はたして「緑化計画」においても、安全面を考慮せずいわゆる“縦割り行政”のまま、、再び新宿区長の「特例」認定が行使されてしまうのでしょうか?

 

 新宿区の道とみどりの課に問い合わせたところ、業者から屋敷森の「緑化計画書」は現在まで提出されておらず、もし提出されれば厳格な審査を行うという回答を得ています。いままで多くの大手建設業者が、この屋敷森の土地購入を控えたり転売してきたのは、建設計画の立地条件が共同住宅建設に不向きであること。つまり安全面や採算面で、かなり無理があるからとも言われています。仮りに「緑化計画書」が承認されれば、総合的な判断を行えない民間の確認機関が、手続き上の書類が揃ったということで、そのまま建築許可を出すとみられますが、周辺住民のみなさんは、ただちに審査請求あるいは提訴に踏み切るお考えのようです。

 

 「下落合みどりトラスト基金」では、貴重な動植物の保護の観点からも、1128日に新宿区議会議長に提出した陳情書Click!のように、新宿区には「建築面」「安全面」「環境面」などを踏まえた総合的な良識ある判断を期待しています。

 

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