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NHK「特報首都圏」で屋敷森を放映

 

421()1930分から25分間、NHK「特報首都圏」で「下落合みどりトラスト基金」が保存を求めている屋敷森が紹介されました。もちろん、たぬきも登場し、下落合だけではなく、練馬区や世田谷区北烏山の屋敷林の美しさと現状、そして地域行政の考え方が相対的に紹介されました。番組では、下落合の屋敷森伐採の様子が映し出され、保存問題は終わってしまったかのように報道されましたが、集合住宅の建設自体の違法性が現在も裁判で争われています。残存のケヤキやクスノキなどの大木をベースに、みどり豊かな公園化の可能性は消えていません。「トラスト基金」も、いまだ活動を続行しています。


 

敷地南側のグリーンベルト

たぬきについては、昨年「トラスト基金」のイベント親子しむたぬきフォーラムClick!でも講演いただき、下落合のたぬきの生態にも精通されている宮本拓海さんが番組に登場し、都会に棲むたぬきの生態や重要性を解説されていました。たぬきが増えているとのお話でしたが、下落合でも屋敷森の周辺以外では単発的な目撃情報しかなく、つづけて生態を観察することはできません。

番組のテーマは、相続などで維持できなくなりつつある屋敷森や雑木林を、周辺の住民や行政がどのように考え、保存に取り組んでいるかというものでした。練馬区では、志村豊志郎区長が「木が大きくなるのは200年、300年かかるが、伐るのはチェーンソーで一瞬である。福祉などの予算を削らず、みどり保全するのは大変な苦労が必要だが、それだけの価値がある」と、率先して区内のみどり保存を提言していました。行政や住民たちが知恵を出し合い、なんとか貴重なみどりを残そうという熱意が感じられました。以前、「トラスト基金」が練馬区に取材したときにも、担当者は「要は、区が可能な範囲内で、なんとかしようという熱意です。練馬区にはそれがあります」と、力説されていたのが印象的でした。

また、世田谷区のケースでは、9年前から行われている住民参加型の屋敷林保護活動が紹介されました。地主が高齢で、樹木の維持管理がゆきとどかない場合、住民のボランティアが落ち葉掃きや枝打ちなどを行う代わりに、区民が屋敷林を自由に利用できるというものです。下落合でも同じようなテーマが存在しますが、世田谷区の試みはとても示唆にとんだ事例だと思います。

屋敷森の現状(4/23現在)

さて、かんじんの新宿区ですが、「取得の意志はあるが、金額的な開きがなんとも難しい」という、いつもながらの型にはまった“答弁”でした。他の区に比べ、「みどりを守りたい」という熱意が感じられません。実際、業者と新宿区は、建築へ向けた話し合いの場は数多く持たれていますが、公園化へ向けた交渉はほんの数回のみで、業者の出す妥協案にもまったく耳を傾けなかった事実が伝えれています。

北側の大ケヤキ

番組の中で興味深かったのは、練馬区が樹木の成長までの年月と、それに必要な維持管理コストを独自に算出し、億単位の評価をしていた点です。しかし、新宿区はおかしなことに、建築課が出した安全認定さえ認めない、つまり集合住宅の建設ができないという前提での更地評価額を、なぜか提示しています。これ自体、非常に不可解なことですが、もちろん練馬区のような樹木やその維持管理のコストなどは、評価額には含まれていません。

  「トラスト基金」では、発足直後から数多くの専門家を招き、自然環境・生物・歴史・文化など多彩な側面から多くの評価をいただき、専門家のみなさんから新宿区へ向けて、さまざまな要望書を提出していただきました。また、樹木や庭石などある広い庭園は、庭園業者より非公式ながら4億円以上という評価をいただき、これも逐一新宿区へ伝えてきています。

  その結果、新宿区は54,000万円という公園化へ向けた予算を用意してくれたものの、番組における新宿区の姿勢は、練馬区など他区との間で「自然」や「みどり」といったテーマに関して、歴然とした温度差があることを、期せずして浮き彫りにしてしまう結果となりました。

  今回の放送枠も、金曜日のゴールデンタイムでしたので、関東甲信越にお住まいの数多くの方々がご覧になっていたはずです。新宿区は、これだけ大きな注目を集めている、たぬきが棲息する区の自然を守り、新宿区民をはじめ応援してくださる都内・全国のみなさまの声に真摯に耳を傾け、みどりの公園化へ向けた決断をしていただきたいと思います。いまからでも、決して手遅れではありません。

 

 

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