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「親子で楽しむたぬきフォーラム」レポート

 

18()は、朝からぐんぐん気温が上がり、開催時間の午後2時ごろには最高気温33℃を記録。東京は梅雨明けとともに、猛暑にみまわれました。会場の地域センターへとつづく炎天下の聖母坂は人通りが絶え、フォーラムへの参加者の出足が気になりましたが、午後145分ごろから会場には次々と人々が集まり始めました。「親子で楽しむたぬきフォーラム」というイベントの性格から、親子連れの姿も目立ちました。フォーラムが終了するころには子供たちも含め、のべ100名前後のみなさんが参加されました。

 

■経過報告

「下落合みどりトラスト基金」の武田事務局長より、プレゼンテーションツールを用いたスライドショー形式で、最新の屋敷森の様子やたぬきの写真とともに、活動経過と現状報告が行われました。特に、屋敷森に隣接する目白御留山デュープレックスにお住まいのみなさんが、新宿区建築審査会へ提出していた建築認可に対する「再審査請求」に対して、76日、実に6ヶ月ぶりに「請求却下」の決定が出た経緯の報告がありました。結果的には「門前払い」というかたちでしたが、審査期間が6ヶ月間にもおよぶ“異常”な対応が指摘されました。「請求棄却」の詳細につきましては、「裁決謄本」がとどきましたので、当サイトで改めてご報告いたします。また、保存・公園化への積極的な動きが見られない新宿区や、まったくリアクションのない東京都の姿勢が報告されました。

 

■ビデオ上映「旧遠藤邸の四季の移り変わり」

旧・遠藤邸屋敷森の四季折々の情景を、美しい音楽に乗せて放映。最新の子だぬきの映像に、子供たちはジッと見入っていました。

■たぬきの紙芝居

都会に棲む、たぬきの坊やを主人公にした冒険物語が、かわいい子供たちによって発表されました。開発に追われたたぬきの坊やが、危険な状況を乗りこえつつ、ついに森の棲家にたどり着きます。その屋敷森では、いろいろな動物たちと出会いながら幸せに暮らしているのですが、ほどなく森が残らず伐られてしまうことになります。たぬきの坊やは、せっかくここまで生き抜いてきたのに、森がなくなることを聞いて途方に暮れてます。100歳をゆうに超える原生の樹木たちが、みんな伐採されてしまうことのないよう、屋敷森が永遠に保存されることを願って物語は終わります。会場からは、たくさんの拍手がいっせいに巻き起こりました。

 

 

■宮本拓海様(動物ジャーナリスト)の講演

子育て中のたぬき一家のビデオを観ながら、東京に棲むたぬきの生態を詳しく講演いただきました。以下のようなテーマで、次々とわかりやすい解説が行われました。

 

たぬきは、お父さんもしっかり子育てに参加する。

都会のたぬきは、側溝や排水溝などをねぐらにしていることが多い。

5月には冬毛だったが、だんだん夏毛に生え変わっていくので痩せて見える。

たぬきはイヌの仲間で、嗅覚が発達しており夜行性の動物。

家族単位で活動し、通常5001,000m四方単位が縄張りだが、それほど縄張りに厳密な動物ではない。

下落合に棲む各たぬきの一家は、それほど縄張りがそれぞれ広くない。

たぬきの食性は雑食性で、肉も食べるが果実や木の実が大好き。びわ、さくらんぼ、柿などの果実や、

冬場はネズミやモグラなども食べているのだろう。

季節によって食べ物を変化させられるから、東京のような都会でも生き残ることが可能。

45月に出産するが、46頭を産むのが通常。下落合は3頭しか産まれていない。(1頭は猫に襲われた)

出生率の低さは、1家族のテリトリーの狭さと関係があるのかもしれない。

下落合に棲息するたぬき一家は、棲息範囲から見て少なくとも4家族10頭はいそうだ。

たぬきはトイレの場所が決まっているので、糞(ふん)のある場所を見つければ活動ルートがわかる。

東京23区には、少なくとも2,000頭のたぬきが棲んでいると思われる。

下落合のたぬきも、どこからかやって来たのではなく、先祖から延々とこの土地に棲みつづけていたのだろう。

それがみどりの減少とともに、住民たちの目につきやすくなっただけだ。

 

あどけない子だぬきたちが、ちょろちょろ動きまわる様子がスクリーンに映し出されると、会場から笑い声や子供たちの歓声が起きました。たぬきは、なんとなく人の心を和ませてくれる動物です。すっかりたぬきらしくなった、最新の子だぬき映像とともに、クイズ形式など子供たちとのやり取りをまじえながら、楽しいたぬきのお話をたっぷりとしていただきました。

中でも紙コップを使った、下落合に息づく動植物の生態系の説明は、たいへんユニークでした。緑地をこれ以上減らせば、現在の生態系があっという間に崩れてしまうのが、紙コップの生態系モデルでとてもよくわかりました。

より詳しいことを勉強したい方は、宮本様が書かれた『動物の見つけ方、教えます! 都会の自然観察入門(数研出版/1,365円/左写真)を、ぜひご参照ください。

質疑応答

たぬきの糞(ふん)というのは、どういう所で見られるのか? また、どのような状態なのか?

たぬきが棲息する都内のあちこちで見られるが、下落合でも必ずどこかの決まった場所で見つかるはずだ。トイレは決められた場所に設定されるので、その糞を分析すれば、なにを食べて生きているのかや、たぬきの生態がより詳しくわかると思う。近所で見つけたら、ぜひ教えてほしい。

糞はどのような状態で見られるのか? また、中井駅・北側の四ノ坂界隈では、内臓を食べられたヘビの死骸がよく見つかるが、たぬきはヘビの内臓を食べるのか?

糞はいつも決まったところでするので、こんもりしている。イヌやネコとは異なるので、すぐにわかると思う。また、たぬきはヘビも食べると思うが、ネコやカラスも襲って食べるので一概には言えない。内臓だけ食べているところから、たぬきではなくカラスではないだろうか。

 

■三遊亭洋楽師匠による「たぬき落語」

ご出身の北海道のお話から、特別天然記念物のタンチョウはわずか800羽、落語家は日本全国でわずか600人、これほど貴重な落語家を間近で見られる下落合の皆さんはとても幸せ・・・という“入り”で、まずは会場が大爆笑。動物と人間との交流や、昔からの古いつきあいから、さまざまな動物の「恩返し」噺が生まれたようです。

 

「鶴の恩返し」(実は「サギの恩返し」)から、放生会(ほうじょうえ)は東両国・回向院の「放し亀」、「ムカデとナメクジ」、「タヌキとキツネの化かしあい」、「タヌキの恩返し」・・・などなど、次々とひきも切らない滑稽な噺に、会場は爆笑の渦につつまれました。洋楽師匠、暑い中をほんとうにありがとうございました。「下落合みどりトラスト基金」メンバーも、とびきり楽しい噺の連続に、たくさんの元気をいただいたような気がします。

放生会(ほうじょうえ)

左の絵は、歌川広重の『名所江戸百景』第五十一景「深川萬年橋(まんねんばし)」です。江戸時代に放生会は、亀や鰻、鯉などで橋上から行われていました。亀は万年の寿があるという洒落から、川へ逃がす(放生会)と諸霊めでたく成仏するという仏教の教えから、たいへん人気がありました。

隅田川の大橋(両国橋)の橋上から鰻を放魚したところ、橋桁が高すぎて鰻が水面に打ちつけられ、プカ〜っと腹を見せて浮いてしまいました。放生会をしたはずが、逆に殺生をしたことになり、かえって縁起が悪くなったじゃねえか・・・という笑い話が、東日本橋界隈にいまでも残っています。

予定時間の午後4時をややすぎて、イベントは無事終了しました。猛暑の中、わざわざお出かけくださいました参加者のみなさま、ほんとうにありがとうございました。今後とも、「トラスト基金」の活動をご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

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