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隣りの中野区で審査会が「建築確認」を取り消し

 

 「下落合みどりトラスト基金」が保存を求めている屋敷森をめぐり、周辺住民のみなさんが新宿区の建築審議会へ審査請求し、判断せずの門前Click!という結果になったことは、こちらでも何度かご報告しました。ところが、お隣りの中野区では、その建築審議会が注目すべき裁決を下し、「建築確認」を取り消す事態となっています。

 

 105()付の「朝日新聞」東京版にも記事が掲載され、「asahi.vom」サイトにもその詳細が載っていますが、この中野区のマンション建設ケースと、下落合の屋敷森に建てようとしている集合住宅のケースとは、隣接する道路幅や安全性のテーマなどが酷似していることがわかります。

asahi.com/MY TOWN東京

 http://mytown.asahi.com/tokyo/news01.asp?kiji=4070

 

 問題のマンション建設計画は、中野区中野3丁目で進められており、業者は地上8/地下1階建てで、延べ床面積6,746平方メートル、高さ24メートルで、79世帯が入居できる集合住宅を予定していました。これが都条例違反だとして、周辺住民でつくる「桃園まちづくりを考える会」が2月に審査請求し、都建築安全条例に明らかに違反していると認定されて、今回の「建築確認」の取り消し裁決となったわけです。

 

 東京都の建築安全条例42項では、防災上から「延べ面積が3千平方メートルを超え、高さが15メートルを超える建築物は、幅員6メートル以上の道路に接していなければならない」と規定しています。ところが、問題の集合住宅は、前面に接する道路は4メートル弱〜5メートル強。マンションの建設予定地を数メートル削る形で道路を付け焼刃的に拡幅し、集合住宅に接する部分だけを強引に6メートルへ広げていました。しかも、下落合の屋敷森のケースよりも深刻だったのは、すでに「建築確認」を受けてマンションの建設が始まっていたことです。

 

 審査請求を受けた審査会は、今年713日、「道路の敷地に接する部分をのぞき、道路自体は幅員6メートルに達している部分が全く見あたらない」、「42項の要請する火災時の避難、消火活動や緊急車両の円滑な進入条件が確保されているとは到底いえない」として、明らかな条例違反と判断しました。しごく当たりまえの、常識的な判断だといえるでしょう。現在、工事は中断されて、マンション建設は宙に浮いたかたちになっています。

●東京都建築安全条例(第四条)

第四条 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合は、その延べ面積の合計とする。)が千平方メートルを超える建築物の敷地は、その延べ面積に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。

延べ面積

長さ

千平方メートルを超え、二千平方メートル以下のもの

六メートル

二千平方メートルを超え、三千平方メートル以下のもの

八メートル

三千平方メートルを超えるもの

十メートル

2 延べ面積が三千平方メートルを超え、かつ、建築物の高さが十五メートルを超える建築物の敷地に対する前項の規定の適用については、同項中「道路」とあるのは、「幅員六メートル以上の道路」とする。

3 前二項の規定は、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、適用しない。

(昭四七条例六一・全改、昭六二条例七四・平五条例八・平一一条例四一・一部改正)

 中野区の事例を、集合住宅建設が予定されている下落合の屋敷森に当てはめてみますと、まず屋敷森の前面道路は2.794メートルで、周囲もすべて4メートル以下となっています。さらに、野鳥の森公園からつづく車輌通行止めの遊歩道(2メートル)は、緊急車輌が通れる道路とは呼べません。建物の延べ面積は2991.78平方メートルで、周囲の状況(交差点の角度も急で46)4メートル道路に接しているとは言えず、また2方向避難もできません。さらに、通り接道(路地)8メートル必要なところがわずか4メートルしかないなど、中野区の条例違反裁決の出た敷地の条件よりも、下落合の敷地はさらに厳しい環境となっています。

 そして、中野3丁目の建設予定地と下落合の予定地とが大きく異なるのは、なによりも「下落合みどりトラスト基金」が保存を求めている、現在の都内ではきわめて貴重となった武蔵野原生林の屋敷森が、そのまま残っている点にあります。

 

 朝日新聞の記事によれば、「以前は他の自治体でも、同様の手法で建築を許可していたが、最近は審査会の判断が厳しくなった。(中野区の手法は)本来の条例の趣旨からすればおかしい。条例を守って頂きたい」との、都建築企画課の談話を掲載しています。

 

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