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建築審査会による「請求却下」の詳報

 

 屋敷森に隣接する周辺住民のみなさんが、建築審査会へ提出していました新宿区の建築認可に対する「審査請求」について、712日に「裁決謄本」が送られてきました。以下が、「裁決謄本」の表紙(部分)です。こちらでも速報でお伝えしたとおり、請求は「却下」されたわけですが、「下落合みどりトラスト基金」の保存活動にも大きく関わることですので、当該管理組合のご了承をいただいたうえで、こちらでも詳細をご報告いたします。

 審査請求をしてから、3ヶ月で裁決がおりるのが通常と言われていますので、それが6ヶ月以上もかかっている点に管理組合のみなさんをはじめ、「トラスト基金」のメンバーも注目していました。しかし、建築審査会の判断は、残念ながら「請求却下」でした。なぜ、これほど単純な裁決を下すのにこれほど長い期間が必要だったのか、たいへん理解に苦しむところです。

 

 判決文などの法律文章が、ことさら面倒かつ難解に書かれるのは今も昔も変わりませんが、当裁決文もたいへんわかりにくい表現となっています。要点をかいつまんで簡単に記しますと、請求人(周辺住民)はこの案件に対して、審査請求をする法的な根拠がない(不適法)ので、審査請求自体が無効であるから「請求を却下する」・・・ということです。俗に言われます、“門前払い”に等しい裁決といえます。以下、裁決の事由について、裁決原文を抜粋してみます。

2 当審査会の判断

1本件審査請求において、請求人は、処分庁が、平成161222日付けをもって、認定申請主株式会社都市デザインシステム及び株式会社ソフトアイに対してなした東京都安全条例(昭和25127日条例第89号、以下単に「条例」という。)第43項に基づく本件認定処分の取消しを求めている。

  本件認定処分は概略別紙のとおりである。(添付別紙略)

2条例43項は、建築基準法(昭和25524日法律第201号、以下単に「法」という。)第43条第3項に基づく敷地等と道路との関係について制限を付加した規定である条例第4条第1項および第2項の規定について、知事が建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により安全上支障がないと認める場合においては、適用しないこととする規定であるが、当該事務は、特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例(平成111224日条例第106号)第2条の表19項ハの規定により特別区に委任され、新宿区においては処分庁である新宿区長の権限とされている。

 ところで、一般に行政不服審査の対象となる処分とは、行政庁の行う行為のうち、法律上の根拠に基づき、公権力の行使として直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為をいうもので卒るから、本件において請求人が取消を求めている本件認定が不服審査の対象たる処分に当たるといえるためには、その認定行為に「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」という処分性が認められなければならない。

 しかし、条例第4条第3項の規定に基づく認定がおこなわれたからといって、それだけでは、認定を申請した者の建築計画について、条例第4条第1項により付加された制限を充足はしていないが、処分庁から安全上支障がないと判断されたことにより当該制限の適用がされないとの効果が発生するのみであって、それにより直接請求人の権利義務に何らかの制限が及ぶことはあり得ない。本件認定に係る建築計画は不確定な部分が残されており、認定をうけた者について、そのことにより直ちに建築行為を開始しうるという法律上の効果が発生するものではなく、建築を行うにはさらに法第6条第1項の規定に基づき、確定した建築計画について、建築主事等に対し建築確認申請を行ない建築基準関係規定に適合する旨の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないのである。

 なお、その際、法第93条の規定により、建築主事等は建築確認をする場合においては、建築物の工事施工又は所在地を管轄する消防長(消防本部を置かない市町村に あっては、市町村長。)又は消防署長の同意を得なければならないのであるが、当該消防署長等の同意は行政機関相互間の行為であって、訴訟、不服申立の対象となる行政処分ということはできないとされているのである(最高裁判所昭和34129日判決 最高裁判所民事判例集13132貫参照)。本件認定もこれと全く同様であって、処分庁と建築主事等間の行政機関相互間の行為であるというべきであり、処分性を有しないのである。

 このように解したからといって、請求人は本件認定に係る建築計画が確定し、それに対する建築確認処分がなされた際に、当該建築確認処分が建築基準関係規定に違反し、そのことにより自らの法律上保護された利益ないし権利が侵害されると判断したとすれば、その段階において当夜建築確認処分に対し審査請求ないし抗告訴訟を提起することができるのであるから、請求人の権利保護に欠けることもないのである。

 以上のとおりであって、本件認定は審査請求の対象となしうる処分に該当しないから、その取消を求めて提起された本件審査請求は不適法であるというほかはない。

3よって、行政不服審査法第40条第1項の規定に基づき本件審査請求を却下することとし、主文のとおり裁決する。

なお、この「審査請求」は、2004(平成16)1222日に、新宿区長が建設業者に対して行った処分認定(東京都安全条例43項の特例にもとづいた認定結果)を、周辺住民のみなさんが取り消すことを求めていたものです。下記に、都条例の当該部分、および周辺住民の「処分認定」に対する異議を、参考資料として掲載します。

■東京都安全条例4(抜粋)

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延べ面積が1,000uを越える建設物の敷地の道路に接するべき長さ(接道長さ)

 1,000u超〜2,000u以下 接道6m以上

 2,000u超〜3,000u以下 接道8m以上

 3,000u超                  接道10m以上

3項 ただし、安全上支障がないと知事(区長)が認めればその限りではない。

■周辺住民の審査請求理由

予定物件は、屋敷森の樹木をすべて伐り倒し、隣地境界2.5mまで接近することで建物面積2,991.78uを計画しました。この面積では、東京都安全条例4条によれば接道8m以上が必要となります。さらに、駐車場面積を加えると3,126.78uとなり、接道10m以上必要となるはずです。

本敷地は、南側・東側は3m以上の崖、北側は2m以上の壁と鉄条網、東側は近接住戸が接近しており、接道はわずか4mしかなく、公道への長さは30mにもおよんでいます。すなわち、火災など災害時には推定100名程の住人が、避難路となるわずが4m×30mの道路に集中することになります。緊急車両は当然すれ違えず、車両の大きさによっては住民の避難にも、大きく影響がでることが容易に推察できます。

新宿区は、あえてここに東京都安全条例43項の特例を用い、認定処分(建築認可)を行いました。ほとんど更地のような土地環境ならまだしも、南側・東側は3m以上の崖、北側は2m以上の壁と鉄条網、東側は近接住戸、避難路は最低4m幅×30m以上道などの悪条件の中、必要接道の半分にも満たないこの立地条件で、特例をあえて用いたことに大きな疑問を感じるしだいです。災害があれば、大惨事になる可能性が大きいといえます。しかし、この認定をもって、建築業者は「建築確認申請」が可能となります。逆に、これが覆れば、業者は買い取り金額に見合った建物は建てることはできなくなるはずでした。

 隣接する周辺住民のみなさまの、建築審査会への審査請求は残念な結果に終わりましたが、「トラスト基金」では屋敷森をそのまま保存・公園化すべく、今後とも鋭意活動していく予定でおります。新宿区が屋敷森の買い取り・保存について、新日本建設()側へ積極的なアプローチを展開してくれないのがたいへん残念な状況であり、東京都石原知事へ向けたメッセージにもなんら回答がありません。

 

 しかし、新宿区のみどりを保存していく思いは、「トラスト基金」へ寄せられます手紙やメールから、ひしひしと伝わってまいります。昨日の「新宿下落合のみどりを守るために/親子で楽しむたぬきフォーラム」でも、たくさんの方々から励ましの言葉をいただきました。みなさまのご協力・ご支援を、今後ともよろしくお願い申し上げるしだいです。

 

 

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