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デング熱の流行と都市部の“熱帯化”現象

 連日、デング熱についての報道が続いています。毎年、東南アジアからの帰国者を中心に、海外で感染して国内で発症する患者は確認されていましたが、今回は70年ぶりに国内で感染して発症したことから問題化したものです。914日現在、代々木公園や新宿中央公園のほかにも、台東区や横浜市で発症したとの報告がなされています。

 デング熱は、ウイルスに感染した蚊に刺されることで、高熱や頭痛、筋肉痛、関節痛を発症する病気ですが、まったく症状の出ない不顕性感染者も半数以上いると考えられ、現在発表されている感染者数より多くの感染者が潜在すると予想されています。そのような不顕性感染者を介して、デング熱ウイルスをもった蚊が豊かな水辺や木々の多い、“たぬきの森”周辺のおとめ山公園や野鳥の森公園、薬王院の森にもいるかもしれません。

 専門家によれば、デング熱のウイルスには4種類あり、2種類以上のウイルスに感染しないと最重症のデング出血熱にはならない(日本の現状では1型のみ流行)といわれますので、過度に心配することはありませんが、私たちも蚊に刺されない工夫が必要だと思われます。

 今秋には、おとめ山公園の拡張工事が終わり、1026日には全面オープンが予定されています。「下落合みどりトラスト基金」は、“たぬきの森”へ建てられてしまった建築途中の違法マンションを解体し、落合地域のグリーンベルト保全の一環として緑地公園化することをめざしています。熱帯症であるデング熱の日本における流行は、都市部の急激な温暖化と決して無関係ではありません。そして、都市部の気温上昇による“熱帯化”は、緑地の急激な減少へと直結する課題でもあります。

 今後とも、新宿区や東京都による蚊の撲滅対策がつづくと思われますが、豊かな湧水を止め、生い茂った樹木を剪定することは難しく、この地域のみどりを守る活動をしている私たちにとっても、今回の問題は公園のあり方を考えさせられる報道だと感じます。

 

写真は11月に全面オープンが予定されている、おとめ山公園の拡張エリア。

 

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