トップページ

義務づけ訴訟は住民側が高裁へ控訴

 

本年921日の東京地方裁判所における住民側敗訴の判決を受け、“たぬきの森”周辺住民のみなさんは103日付けで、東京高等裁判所へ上告しました。

東京地裁の判決では、本件の除却命令(つまり住民側から新宿区へ要求している危険な違法建築物の即時撤去)が実行されないことにより、原告ら(住民側)に重大な損害が生じる怖れはないと決めつけています。

その理由は、現状の同建設現場では十分な危険防止の措置が取られ、住民の入居前でもあるためガスも設置されておらず、家具や燃焼物が建物内に存在しないことから、原告(住民側)が延焼の恐れがあると主張している火災等の発生する危険性はきわめて低いというものです。したがって地裁では、「重大な損害を生ずる恐れがあると認定するには足りない」ことから、他の争点(危険性)については判断するまでもない・・・としています。

近年、震災に関する報告や火災・放火事件などの報道を踏まえるなら、耐火建築物であっても延焼の原因となりうる(加藤孝明准教授Click!研究成果Click!延焼運命共同体Click!の考察)と想定するほうが、むしろ自然で事実に則していると思われます。すべてを「想定外」にし、責任の曖昧化や不在化をされるのはもうゴメンです。

もっとも重要かつ意外な点は、「重大な損害を生ずる恐れがあると認定するには足りない」だけの判断で、最高裁の判決により規定されている違法建築物を、入居者さえいなければこのまま半永久的に放置してもかまわない・・・とも取れる、きわめてコンプライアンス感覚の低い視座に、その司法当局であるはずの東京地裁判決が立脚しているということです。これは、絶対に見逃すことのできないポイントです。

日本全国の裁判で確定された違法建築は、入居者がおらず「重大な損害を生ずる恐れがなければ、そのままいつまでも放置してよい」との前例(判例)にもなりかねない、非常に危うい視座だといわなければなりません。社会的な常識感覚、あるいは一般市民のコンプライアンス感覚に照らせば、最高裁で危険性が明確に規定されている違法建築物なら、きわめてすみやかに撤去されてしかるべきものだと考えます。裁判所が司法府の本拠なら、率先して違法建築物はすみやかに撤去する命令を出し、違法状態を招来する以前の姿(原状)へ復帰させるべきだとの判断を下してしかるべきものだと思われます。

さて、今年の夏から違法建築である「重層長屋」の、シートや足場が取り外されました。長期にわたり不明だった工事の様子ですが、配管などはいまだ完成しておらず、内装も途中の段階で放置されています。無惨な廃墟の周辺では美しい紅葉が進み、秋の彩りに覆われています。

 

Copyright © Shimoochiai Midori Trust. All rights reserved.