トップページ

たぬきの近況と係争中の違法建築裁判のゆくえ

 

「たぬきの森」とその周辺も深緑が深まり、暑い夏を迎えています。工事途中で放置されている、違法建築「重層長屋」の周辺で、時折りたぬきが出没しています。物音に気づいて覗くと、シートの向こう側へ逃げていくようです。工事が停止して放置され、人気が無くなった建設現場で、いったい何をしているのでしょうか? すぐ近くの野鳥の森公園周辺では、ほぼ毎晩のようにたぬきたちが目撃され、またネコと鉢合わせしてしまったものでしょうか、ときどき威嚇するような鳴き声も聞こえてきます。おそらく、工事が止まった「重層長屋」を、人気がなく居心地のいい休憩所として活用しているのではないかと思われます。

建設業者(新日本建設株式会社)と新宿区との裁判Click!では、住民側の訴訟において最高裁から違法建築との最終判断が下されたため、業者側が新宿区に対して26億円という法外な賠償を請求しています。建設業者は、買い取りを申し出た区民や新宿区に対して、まるで「土地転がし」のように大きな利ザヤを上乗せした額を提示して顰蹙をかいました。その雪だるま式に利ザヤを上乗せする不誠実かつ非常識な事業姿勢ばかりでなく、この間、何度にもわたって地元住民や新宿区、そして全国から「下落合みどりトラスト基金」に対して、「たぬきの森」保全の寄付を申し出ていただいた方々を欺きつづけClick!てきており、とても社会的責任を果たすべき上場企業の事業姿勢とは思えない行為を繰り返してきました。

一方、新宿区側は、認定は行なったが建設したのは業者の判断であり、区には責任はないと主張していますが、果たしてどのような判断が下るのでしょうか? また、地元の住民側が新宿区に対して起こしている義務付け訴訟Click!は、最高裁で危険性のある違法建築との判決が出ているにもかかわらず、「重層長屋」に入居者がいなければ安全性に問題はなく、業者が撤去しない場合の代執行も含めた措置をただちに行う必要はないとし、自らの判断で定期的に行っていた住民説明会も、一方的に中止Click!してしまいました。

住民側は、本年1月に発生した七曲坂の火災Click! でも明らかなように、放火を含めた不慮の火災による周囲への延焼が、最高裁の判決で指摘されている「生命および財産を危険にさらす可能性」そのものの事例であることを指摘し、新宿区が犯した過ち(違法な安全認定と建築確認)をただちに是正し、違法建築そのものを撤去するように求めています。

今回の東日本大震災では、国や東京電力が利権集団「原発村」以外の学者や専門家、市民などから提起される、原発の危険性や課題、問題点を一貫して無視・黙殺してきたことが、原発3基が同時にメルトダウン・メルトスルーを起こすという史上空前の大惨事をまねき、世界中へ日本の危機管理の甘さと、東京電力による運用管理のいい加減さを露呈してしまいました。東電が「想定外」としていた事態を予測・想定し、1979(米国スリーマイル島原発事故)以降、あるいは1986(ソ連チェルノブイリ原発事故)をきっかけに、危険性を訴えつづけていた人たちが大勢いたことが、これからもさらに明らかになってくることでしょう。

さて、原発と違法建築とでは分野やテーマがまったく異なりますが、周辺住民の「生命・財産を危険にさらす」状況という一点では、本質的にまったく同一の課題です。そこには、容易に「想定外」の事態があってはならず、また専門家や最高裁判所や周辺住民のみなさんが危険性を指摘している声にまったく耳を傾けない・・・という姿勢も、許されるべきものではありません。新宿区は、今後も「入居者がいなければ安全」(どのような根拠があるのか不明)という主張を繰り返すだけで、それらの声をいっさい無視・黙殺しつづけるつもりなのでしょうか?

次回の住民側が起こした「義務付け訴訟」の口頭弁論は、930日に予定されています。

 

Copyright © 2005-2011 Shimoochiai Midori Trust. All rights reserved.