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新宿区の違法建築に対する対応遅延の見解

−最高裁判決を無視し違法建築に延焼の問題は少ないと区側が言明−

 

  610日を回答期限として、新宿区は業者に対し違法建築の是正に関する督促状を送達していました。下落合の住民側と新宿区との会議では、区側はその経過を住民側に対して連絡する約束をしていましたが、一向に連絡が入らないため、区の本問題の担当者へ状況を問い合わせたところ、あたかも最高裁判決などなかったかのような驚くべき反応が返ってきました。

  東京高裁や最高裁の裁判において、“たぬきの森”周辺住民のみなさんは、「重層長屋」の違法建築により生命や財産へ直接的に危険がおよぶ、法律上の原告適格性があると規定されました。工事の途中とはいえ、完成間近の時点で放置されたままの建物自体に、同様の危険性がともなっているのは自明のことです。ところが、新宿区の担当者は、(判決内容)あれは建物が完成したときのことで、今はきちんと管理していれば違法建築でも安全という認識です。差し迫った問題ではありません」と、明らかに最高裁の規定や判決に反する、驚くべき回答をしてきました。最高裁も、新宿区の役人にずいぶんとなめられたものです。

  現在、違法建築物は80%以上が完成していますが、新宿区が推奨する消火システムは備えておらず、放火や失火などで資材が燃え、火災が拡がって周辺の住宅に重大な損壊(延焼)を与える恐れがある状況にまったく変わりありません。新宿区は、「きちんと管理」さえしていれば問題はないという回答です。ところで、根本的な疑問ですが、放置された工事中の建物を「きちんと管理」していると認定できる論理的な根拠はどこにあるのでしょうか?

  新宿区は、業者へ出した違法建築是正の督促期限から、すでに2週間以上が経過しているにもかかわらず、次のアクションをまったく起こそうとしていません。住民側の「いつまでに、次のアクションを起こすのか?」という質問にも、「強い督促をする予定だが、期日は決まっていない」との回答を繰り返すばかりでした。業者側は、建築審査会に審議を依頼するなど、これまでの反応を見ても新宿区に対する提訴の準備に入っており、新宿区の督促や勧告など法的強制力を持たない呼びかけレベル(区が命令を出して初めて法的な意味を持ちます)では、解体などの是正を行うことは考えにくいのが現状です。

  新宿区建築課の隠蔽行為に端を発した本問題で、下落合の近隣住民のみなさんはたび重なる審議会や裁判を経て、5年以上の歳月を費やしてきました。近隣住民は、このような経過などの状況を踏まえ、業者から新宿区の督促に対して反応がない場合には、区が業者に対して違法建築改善の勧告→命令→解体の代執行(区が業者に代わって解体をし、解体費用を業者へ請求する)などの段階的実施を、今後どのようなタイムスケジュールで行なっていくのか、その具体的なプロセスの提示を何度となく要求してきました。しかし、「業者が無視することを前提にする準備やタイムスケジュールなどできない」と、あたかも場当たり的かつ日和見的で無計画な対応を当然とするかのような姿勢を露呈し、言外に「無視しない可能性もある」との業者への気遣いさえ匂わせて、新宿区民の意向を一貫して無視しつづけてきています。

  督促期限が2週間以上も経過しているにもかかわらず、新宿区は次のプロセスへと進む準備がまったくできていないとのことですが、その理由を訊ねると「業者が無視するとは想定していない」とのこと。区の担当は実に「人がよく」ノンビリとしていて、また督促期限を2週間以上も無視されているにもかかわらず、どこまで「おめでたい」考えをしているのでしょう?

  近隣住民のみなさんは、新宿区からのタイムスケジュールの提示がないため、また最高裁の判決などなかったかのようにふるまう区の対応にあきれ果て、近く義務づけ訴訟(新宿区に業者への命令、そして区が代執行を行うよう裁判所からの期限付きの命令)を行う準備に入っています。またしても、新宿区民が新宿区を提訴するわけですが、区長選も間近な現在、区と区民との間の溝はますます拡がりこそすれ、容易に埋まりそうもありません。

 

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