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最高裁の判決文と「トラスト基金」活動の今後

 

 画期的な最高裁判決から10日が経過しましたが、事務局には各方面からの問い合わせが、数多く寄せられています。また、「下落合みどりトラスト基金」のパンフレットを置いた、目白・下落合界隈にある喫茶店などの店舗では、改めてパンフをもらいにくる住民の方が続出して在庫が払底するなど、地域全体の関心の高さがうかがわれます。大きなインパクトを建築分野にも、そして地域にも与えた“たぬきの森”の最高裁判決ですが、今回はその判決文全文を入手しましたので、ご紹介したいと思います。

2009年(平成21)12月17日最高裁判決文(14KB)

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 判決文をお読みいただくとおわかりかと思いますが、東京高裁で敗訴となった新宿区(建築課)は、今回は「特例認定」や「建築確認」の違法性の内容は問題にせず(実は、そこがいちばん法的にも安全性からも肝心かなめのテーマであることは、当サイトをお読みいただいている方には自明だと思います)、「特例認定」が出されてから規定の1年以上の時間が経過(裁判・法律用語では「徒過」といいます)しているため、住民側の訴えはそもそも無効であるという主張をしていました。

 換言しますと、周辺住民の生命や財産を脅かす違法建築であることは暗に認める(!)が、裁判の手続き上のルールを主張して、生命に関わる重大なテーマをすべてオミットし、今回は最高裁から訴えを門前払いしようという姑息な「戦術」をとりました。(すでに論理的には破綻しつくし、有効な反論ができないまでに新宿区は追いつめられていました) しかし、争点の内容にまで深く踏み込んだ高裁判決が出ている現状を考慮すれば、すべての争点を「なかったこと」として糊塗しようとするような小手先の「戦術」が無効なのは、もはや自明のことです。

 最高裁判決は、新宿区(建築課)が違法な「安全認定」(特例認定)を出したとしても、書類上のことなので近隣住民に具体的な被害は見えず、また近隣住民へ告知されることもないので、「安全認定」(特例認定)の時点から計算して「徒過」してしまうのは仕方がないとし、「建築確認」があった時点から近隣住民への不利益が初めて現実化するのであるから、たとえ「安全認定」(特例認定)が違法として事前に取り消されていなくても、違法な「安全認定」(特例認定)にもとづく「建築確認」であれば、「徒過」(時間が経過)していても違法性は十分に問えると、しごく当然な判断をしています。結局、最高裁も東京高裁とまったく同様に、新宿区が主張する裁判の“入り口”論でも“手続き”論でもなく、争点のテーマや内容そのものの重大性を尊重するという的確な判決を下しました。実際のテーマや課題・争点には頬っかぶりをし、手続き上の形式的な問題にすりかえて逃避をしつづけた新宿区建築課の姿勢が、まさに糾弾されている判決内容となっています。もはや、逃げ延びる余地はまったく残されていません。

  最高裁判決文表紙

 先日の記事にも書きましたが、このような愚かしい結果になったそもそもの原因は、新宿区建築課が誤った違法認定を出した場合、本来はその誤りを指摘して是正する機関であるはずの新宿区建築審査会が全的に機能せず、建築課とまったく同様の逃避裁定を繰り返したことにも起因しています。建築課のOBも含まれているという、新宿区建築審査会の存在理由と意味そのものが、今回の最高裁判決で鋭く問われているといっても過言ではありません。本サイトでも、当初から繰り返し一貫して主張してきましたように、新宿区がきわめて形式主義的な“入り口”論をかざし、建築基準法に明らかに違反し安全性をなおざりにした「重層長屋」の建設を認めて仮に建物が完成し、緊急災害時などの際に火災などが起きて大惨事を招来した場合、この危険きわまりない違法建築を「安全認定」(特例認定)したために生じた重大事態の責任は、いったい誰が取るのでしょうか? 司法は法律に照らし合わせ、しごく当たり前の判決を下しているにすぎません。

 区民の安全を守るはずの新宿区(建築課)が、このような愚かしい形式主義的な言質を数年間もしつづけ、違法性や危険性を無視して区民の声にも耳を傾けず、むしろ区外の業者側の視座へ立脚したかのような姿勢を取りつづけたことは、まさに本末転倒であり、地域行政としては失格の烙印を押されても仕方のないことでしょう。最高裁の判決直後、「司法の決定を真摯に受け止める」というような、これまた非常に形式的なコメントを区長名で発表していますが、このような一過性でおざなりの言質では済まない現実の大きな課題が、区役所内の建築課という部局と新宿区建築審査会という機関として、目の前にぶら下がっていることを、今度は逃避せずにしっかりと認識すべきです。周辺住民のみなさんは、この誤った違法「安全認定」(特例認定)により、現実的に生命や財産の危険を含む住環境全体が脅かされ、環境破壊や工事の騒音なども含めた多大な精神的負担、さらに裁判による経済的負担の被害をこうむることになりました。新宿区は、官僚主義的な形式主義や「私利私欲」にとらわれることなく、区民(の声や安全)をまず第一義的に考慮し、この先、二度とこのような大失態を繰り返さないよう猛省していただきたい思います。

 以上、新宿区(建築課)の主張はすべてひとつ残らず棄却され、この「重層長屋」は正式に建築基準法に違反した危険きわまりない違法建築となりました。少なくとも「トラスト基金」としましては、新宿区の特定部局や機関における個々の担当者の責任追及がテーマではなく、あくまでも下落合のみどりを少しでも増やすグリーンベルトの回復と、「七つの都市の森構想」を推進する中山弘子新宿区長および関連部局と連携したみどりの公園化がメインテーマですので、“たぬきの森”問題が浮上した当初から公園化の予算をプールし、理解を示していただいていた中山区長へ、近々改めて陳情すべく準備を進めているところです。今後とも、本サイトの記事にご注目ください。

 

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