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“たぬきの森”の近況報告

 

 “たぬきの森”の近況を、ご報告いたします。国土交通省の審査あるいは裁判のゆくえによっては、工事中止・解体リスクの可能性がある中、「重層長屋」の基礎工事は進んでいます。しかし、近隣にお住まいの方々との「工事協定書」の締結は、遅々として進んでいないようです。基礎の施工は大急ぎで進めているにもかかわらず、近隣配慮であるはずの「協定書」については、まったく急ぐ気配すら感じられません。なにか事情でもあるのか、通常着工とともに行われる販売も、いまだ行われていないようです。

 先日、森の東側にあたる七曲坂(ななまがりざか)で、雨上がりの深夜、「トラスト基金」のメンバーがたぬきを目撃しました。メンバーとともに同時に目撃された方は、下落合に住まわれて30年、たぬきを初めてご覧になったようで、大変感動されていました。たぬきは少しの間、木陰に隠れていましたが、しばらく観察していると東側の崖より坂を横断し、西側のたぬきの森の方へと消えて行きました。目撃したメンバーによれば、久々にお目にかかったたぬきは、森が荒らされていても毛並みはよく、健康そうに見えたとのことです。たぬきたちが大昔から住む下落合のグリーンベルトを、改めて大切にしなければならないと感じます。

 

 この七曲坂とは、下落合に残る古道のひとつで、古文書によっては「七囲坂」とも書かれている坂道です。古くは、たぬきの森あたりの字(あざな)を七曲(七囲)とも呼びました。坂下の氷川明神社とともに大蛇退治の伝説や、鎌倉期の頼朝伝説などが残っています。この夏、宅急便のテレビCMにも登場し、ご覧になった方も多いかと思います。

 一方、たぬきの森の西側にある薬王院周辺でも、たぬきの目撃情報は頻繁です。おそらく、下落合のあちこちでなっている柿の実などを食べに、周辺を数頭単位で散策しているのではないかと思われます。やはり夜間が多く、薬王院脇にある畑地や野鳥の森公園、薬王院門前の路上や民家、久七坂筋などで目撃がつづいています。たぬきが頻繁に、人々の目に触れるようになったということは、換言すれば彼らが隠れて棲息していた場所が、急速に奪われつつある・・・ということの証明なのかもしれません。

 

 たぬきの森は、一時期のように全国的な注目を集めることこそなくなりましたが、「下落合みどりトラスト基金」では、新宿区に残るグリーンベルトとたぬきの生息域を守るためにも、粘り強く活動をつづけてまいります。引きつづき、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

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