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周辺住民の新宿区あて公開質問状5を入手

 

 今回の新宿区建築審査会の棄却裁定をうけ、近隣住民のみなさんは新宿区長あてに629日付けで「公開質問状/その5」を提出しました。この時点では、前建築課長および現建築課長が避難路の最小幅が1.5m1.8mであることを容認したという事実は判明していなかったとのことです。したがって、質問状の内容には含まれていません。

 

 「下落合みどりトラスト基金」では、新宿区からの回答書が入手できしだい、いつものようにこちらで公開する予定です。

 

 

公開質問状/その5

 

 私どもは、平成19316日付けで(仮称)エクセレント目白御留山集合住宅に関し、公開質問状その4を新宿区長及び建築主事に対し提出いたしました。これに対する回答書を平成19416日付けをもって受取りましたが、私どもとして何度読み返しても納得することができません。

 回答書は、行政庁の主張立証責任を放棄し、これに基づく回答をしていません。

 質問に正面から全く答えていないのです。都合の悪いところは、全て頬被りしているのです。法律、安全条例、手続き条例、最高裁判決に基づかない、恣意的処分、業者との癒着が疑われる処分が自白されていると言わざるを得ないのではないのでしょうか。

 そこでやむを得ず、今般各回答に対し再質問を行うと言う形式で、公開質問状その5を提出するしだいです。透明度の高い誠意ある再回答を心からお願い申し上げます。

 

1に対する回答1「問1、新宿区行政手続条例を無視した違法な認定処分」について

 

(1)について

 新宿区曰く、市販されている「東京都建築安全条例とその解説」(発行社団法人 東京建築士会)という本を買い込んできて、窓口に置いておいた。みんなにも広く使われているみたいだ。だからこれが行政手続法(条例)5条の審査基準でございます、ということのようです。こんな無責任な主張をする行政庁は聞いたことがありません。総務部総務課も同様のお考えなのでしょうか、お答え下さい。

 それにしても、条例解説書(東京建築士会)のどの部分を、いつどのような形で、誰の決裁で(区長か部長か)、審査基準とする旨を意思決定したというのでしょうか。その過程を明らかにする文書(決済文書等)を公開していただけないでしょうか。

 新宿区は、前回の審査請求事件では、行政手続条例については一言も言及しませんでした。解説書についても一言も言及しませんでした。そして、正体不明の「許可認定検討委員会」なるもので、恣意的認定をしたのです。同委員会なるものの正体はどんなものなのでしょうか。正体不明のものに判断された認定は、建築主との癒着が疑われたも仕方がないでしょう。それ自体で、違法、無効だと言えます。少なくとも、「許可認定検討委員会」の意思決定過程(同検討委員会の議事録等)を公開していただけないでしょうか。

 また、新宿区は、安全条例43項を適用するか否かの判断過程に「区長の広範な裁量が認められる」といいますが、条例41項に適合し、接道部分から道路状空地(通路)がずーっと8mの幅員を確保している場合と同等の安全性の確保ができる場合に限って、3項の安全認定を行うことができるということは、申請人と処分庁で見解が一致しているところですから、区長の裁量にも当然にそのような制約があると考えます。安易に区長の広範な裁量が認められるものでないことをご確認願います。

 

(2)について

  審査基準は、条例5条に規定する「行政規則」であり、最高裁判決(伊方原事件)は、同審査基準に適合するとした処分庁の判断に過誤・欠落があると認められる場合は違法となると判断しています。また、最高裁判決(個人タクシー免許事件)は、免許の拒否を決する手続は、審査基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用しなければならないと判決しています。

  従って、本件安全認定は、手続条例5条規定の審査基準に基づかないものであるから、手続条例5条の適用において(ようやくこの適用があることを回答書は認めたのですが)違法であり、最高裁判決に基づけば、「処分庁の広範な裁量」による処分は違法です。あと出しの解説書を審査基準にした認定処分は、法律、条例、最高裁判決に基づかない処分で、それは完全な恣意的処分であり、全き違法な処分です。「解説書を基準として認定処分を行っており、恣意的判断に基づき処分を行っているわけではありません」との回答は、違法な恣意的判断に基づく処分であったことを新宿区自らが認めたものであると考えますが、如何でしょうか。

 

(3)について

 新宿区も既にご承知のとおり、平成17年に「下落合みどりトラスト基金」が安全認定処分の状況を新宿を除くすべての特別区、及び武蔵野市、調布市、国立市、八王子市の4市を加えた合計26自治体に対しアンケート調査を実施したところによれば、「貴区(市)では、過去数年間で東京都建築安全条例41項に関し、特例の43項での認定処分を行いましたか。」という質問に対し、回答は、年に数回ある0、年に1回程度2、ほとんどない2、全くない20、未回答2というものでした。

 新宿区は、「審査基準を定めているのは、渋谷区、中野区及び豊島区のみで、残りのほとんどの区は、条例解説書を審査基準としている」といっていますが、残りのほとんどの区は安全認定を行っていないのですから、審査基準を定める必要はないのです(解説書を審査基準としているなどと非常識な主張をする区(市)は他にないでしょう。あるとすれば、どの区がどのように主張しているか、具体的に示して下さい)。従って、やはり「新宿区のみがこれにほお被りして」いるといえるのではないでしょうか。こんな明々白々たる事実を理解できずに、新宿区のみがほお被りしているのではなどと強弁するのは、新宿区当局が余程無能であるか、又は区民を愚弄するものであるか、そのどちらかではないでしょうか。

 

2に対する回答2「問2、長屋と判定したことの脱法性」について

 

 新宿区が長屋と判定したことに関しては、定義の単純な形式的文理解釈論を繰り返しているだけで、全く納得がいきません。やはり、質問状が建築基準法が特殊建築物を規制する趣旨目的から解釈すべきではないかと主張しているのですから、この点に関し、新宿区の真正面からの回答をお願いします。

 また、このような規模形状の建物が長屋として建築された事例があるのかという質問に対しては何ら具体的回答がないのはどうしてでしょうか。行政当局は豊富な情報をもっているのですから、具体的な事例をあげて説明すべきです。特に、本件のケースと同様に、安全条例43項の安全認定がなされた敷地に本件のような規模形状の長屋が建築された事例があることを具体的に示していただければ、それなりに説得力がある回答となるでしょう。しかし、新宿区からそのような事例を示していただけませんから、そのような事例は実際には存在しない、従って、新宿区は安全性無視の行政と本邦初演で行おうとしていると考えてよろしいでしょうか。

 

3に対する回答3「問3、安全認定の違法(条例41項規定と同等以上の安全性の欠如)」について

 

 回答書も、安全認定に当っては、「本件計画が安全条例41項と同等以上の安全性が確保されているかどうか」を基本においています。これは正しい考え方ですが、具体的には、本件の場合「条例41項に適合し、接道部分から道路状空地(通路)がずーっと8mの幅員を確保している場合(接道部分に消防車両を停車させても、居住者が支障なく避難できる状況)と同等の安全性の確保(消防隊の接近の容易性、避難の安全性、救助の確実性など)ができる場合に限って、3項の安全認定を行うことができる」ということになります。

 回答書の言い分は、その大部分が違法な主張、事実誤認の主張です。第三者からみても、接道部分から続く道路状空地が4mと半分になった場合にこれを補って同等の安全性が確保されたとみなされる論拠となりうるもの(安全性を確保するための代替措置)は見当たりません。従って、特に次の点をお聞きしたいと存じます。

 

Aアについて

 新宿区のいう「延焼のおそれのある部分」とは、1階では3メートル、2階以上にあっては5mとされていますから、本件の場合5mとなります。

 本件建築物の外壁から5m以内に隣接する建築物(しかも木造住宅も含まれる)が複数存在しています。また、消防専門家の鑑定意見でも、「東京消防庁の火災の実態」等の資料から、実際には5mはおろか、6m超でも延焼しているケースがあるとされています。

 これらを勘案すれば、回答書にあるように、「重大な被害をおよぼすことを防ぐことにもなる」などとは到底言えないのではないでしょうか。

 どう考えても、やはり、条例4条3項の特例を適用するためには、例えば渋谷区の審査基準(建築物の全周囲に3メートルの空地が存在すること、かつ、当該空地が通行上、避難上、防火上有効であることが、条例4条3項安全認定の最低限の絶対条件)のように、安全のための措置を上乗せして、1項と同等に安全な状況を作り出す必要があると考えるのが当然なのではないでしょうか。

 

Aイについて

 そもそも、条例41項の規定は、2,000uないし3,000uの建築物の敷地は、接道部分から道路状空地(通路)がずーっと有効8mの幅員がなければならないことを要求しています。にも拘らず、回答書は「本件建築計画敷地内に有効幅員4mの道路状空地(通路)を確保することは、本件建築物のみが接する道路が確保されていることと同等であり、十分に安全である」と言っています。これは、41項の規定を全く空文化するもので、論理的に破綻した言い分ではないでしょうか。そんな言い分が成り立つなら、初めから41項の規定をおく必要が全くないのではないでしょうか。

 とにかく、有効幅員8mが安全面からの条例上の義務であるのに、幅員4mでも同様で十分に安全だというのでは、何が何だかさっぱりわかりません。しかも、それが安全認定の理由になるというに至っては、正常な日本語による合理的な理解の範囲を超えています。よく判るようにご説明願います。

 

Aウについて

  「消防活動用空地」は、「標準的なポンプ車が停車できる規模となっている」といいますが、平常時に物理的に停車できるというだけのことであって、火災時に消防車輌が進入して消防活動を行うことは警防戦術上全く考えられないことです。消防専門家の鑑定によれば、消防活動用空地では車両の方向転換も行えず、火災時には濃煙熱気に囲まれ、退路を絶たれる可能性があり、実際に消防車両が本件空地に進入して活動することなど、あり得ないことなのですから、消防活動用空地は「絵にかいた餅」と言わざるを得ません。新宿区の職員が消防活動を行うわけではないでしょう。それとも、消防署の担当官にでも確認して回答しているのでしょうか。そうだとすれば、その証拠をお見せ下さい。

 

Bウについて

 本件計画建築物敷地の周辺の道路はすべて幅員4m以下の狭い道が迷路のように入り組んでいて、坂や階段で行き止りなどもあります。

  また、新宿区発行の防災点検マップ、東京都作成の地震に関する地域危険度測定調査などをみても、危険な地域とされています。

 そして、消防同意時における新宿消防署意見によれば、「仮称「エクセレント目白御留山」を建築する予定の新宿区下落合四丁目地域は、当署で「地勢情況により消防活動が困難となっている区域」として警防対策を策定している地域です。当該建築予定地へ消防自動車が向かう道路は一本であり、更に、その道路の最も狭い地点で電信柱と塀の間を実測したところ、3.3mでした。この地域は道路狭隘地域であり、消防活動の困難な地域と言わざるを得ません」と懸念が示されています。

 このように、周辺市街地は、火災危険度の高い地域であり、消防活動が困難な地域なのに、どうして「周辺市街地の状況は、・・・特に支障とはならない」といえるのでしょうか。新宿消防署と全く異なる判断を下す根拠があるなら、もっと具体的にその根拠を説明して下さい。

 

4に対する回答4「問4、消防署長の意見を根拠とすることの誤り」について

 

   質問状にもあるように、消防署長は建築物と敷地の関係について審査する権限がないのですから、法的拘束力をもつ条件をつけなかったのは当然のことです。建築物と敷地の関係については、専ら新宿区の権限と責任で処理されるべきものです。従って、消防同意の条件でないことを消防署長に確認したからと言って、新宿区建築主事の責任が免れることはないと存じますが、如何でしょうか。

 新宿区が連結送水管の設置を指導したことは、同区の開示文書から確認できます。そして、回答書は、「この建築主に対する区の指導は、消防署長からの意見書を受理した後、消防署との協議及び指導に基づくものであり」と述べていますが、新宿消防署の開示文書からみて、消防署は連結送水管の設置を指導したことがなく、新宿区と新宿消防署が協議及び指導した事実もありません(消防署との協議及び指導があったというのなら、その証拠を示してください)。

 行政庁たるものがアバウトな嘘をいってはいけません。くどいようですが、平山部長の議会答弁(「消防署の指導により、建物外周部に連結送水管を設けており、ご指摘の地域の安全性は十分確保されていると考えております」)は、明らかに事実に反するもの(消防署は連結送水管の設置を指導したことはない、連結送水管の設置により敷地の状況が変わりとくだん避難しやすくなるわけではないから、地域の安全性は十分確保されるとは言えない)です。この点もっと正確、緻密に論理だててお答え下さい。

 

5に対する回答5「問5、三棟の建築物を一棟の建築物として建築確認したことの違法性」について

 

 本件認定は、法律的及び技術的にみて、建築基準法21号(建築物)、25号(主要構造部)、施行令812号(エキスパンションジョイント)に違反しています。あきらかに、本来のエキスパンションジョイント(非構造部材)の明らかな脱法的利用です。

 そして、建築基準法は、一敷地一建築物に基づいて建築物の高さ、規模、日影、接道義務を規制するものです。にも拘らず本件確認は用途可分の三棟の建物を一棟として、法の大原則によって保障されていた日照などの保護規定を奪うものとなっています。

 例えば東京都建築審査会の裁決結果(東村山事件)に基づけば、本件建築物は明らかに三棟であると考えますが、如何でしょうか。

 

6に対する回答6「問6、本件確認済証の違法交付」について

 

  条件つきの建築確認は前代未聞であると考えられますが、このように新宿区が急いで確認をおろしたのはなぜでしょうか。建築基準法64項を見てください。「条件付き確認」は、64項に文字通り違反することは一目瞭然です。この点について回答書はなんら触れていませんが、新宿の公式見解をお聞きいたします。

 建築主は、122日から31日間、現地調査(試掘調査)を実施しましたが、今回の回答書にはその結果について何ら触れていません。回答書はこのことに関し頬被りしているのです。何故、その調査結果について回答しないのでしょうか。金子主事が1828日付疑義あるとした文書で通知した疑義が14月経過させた現在でもいまだに存続していることを回答書は自ら物語っているのではないでしょうか。

 

7に対する回答7「問7、建築確認にあたりさらに危険側に変更することを認めたことの違法性」について

 

 新宿区は、本件安全認定処分に当り、「隣地との間に有効幅員22.5mの避難経路(通行の障害となる建築物、工作物は設けません。既存の植栽、樹木についても通行の障害なる場合には伐採、移植することとします)を設けること」を条件としました。それが回答書では、「安全空地内には、避難・通行上支障とならない幅1.5mの通路が確保されている」といい、それでも「危険側へ変更していません」と強弁しています。完全な空地を22.5m確保することを安全認定の条件としたのに、建築確認にあたって1.5mの通路でよいとしたことが、危険側へ変更したことにならないというのは、論理的に意味不明で、どう考えても理解不可能です。危険側への変更を認めたことを率直に明言すべきではありませんか。

 回答3Aアで述べたような審査基準をもつ渋谷区とは大違いです。それとも、新宿区と渋谷区では都市の密集度が異なり、火災危険度も異なるとでも言うのでしょうか。

 

8に対する回答8「問8、行政運営における透明性の侵害」について

 

  平成1612月の安全認定にさかのぼっての質問にはなんら回答がありません。この点再回答をお願いしたいと存じます。当時多くの不動産業者が集合住宅は建てられないと考えていた敷地に突如として予定を繰り上げて新宿区長が安全認定を行ったその不可解さについて何のコメントもないのは、建築行政の透明性を著しく侵害するものではないでしょうか。

 行政情報の公開は関係者の同意により行うものではなく、客観的に判断するべきものではないでしょうか。また、差し替え前の書類は、申請者に返却し区には存在していないといいますが、行政の意思決定過程の透明性の確保という観点からは、差し替え前の書類の保存しておくことは、行政当局として当然の責務ではないでしょうか。この2点は、新宿区当局の行政情報公開条例の運用に関する本質的な疑問点です。明確にお答え下さい。

 客観的にいって、回答文からは、新宿区建築当局は行政情報公開条例を守り、行政運営の透明性を確保しようとする態度が感じられません。どうぞ、行政情報公開条例の趣旨にてらし、透明度の高い誠意ある再回答をお願い申し上げます。

 

 

 

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