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ケヤキ伐採とオオクスノキ移植に疑問の声

 

  屋敷森の「集合住宅」建設工事は、4月末より動きがまったく見られず進捗していませんでしたが、新宿区および所轄警察署が重機通行許可を新日本建設へ下したため、ケヤキの巨木伐採とオオクスノキの“移植”を511()より開始するとの連絡が、「下落合みどりトラスト基金」へ入ってきました。「トラスト基金」が集めた情報を総合すると、以下のとおりです。

 

  このオオクスノキの移植に関しては、新宿区の「道とみどりの課」とは別に、区のお目付け役とも言える区民から選ばれた「みどりの推進審議会」委員の依頼により、215日に専門の樹木医へ診断を依頼しています。そして、310日付けの意見書が作成され、313日に「道とみどりの課」へ提出されていました。

 

  樹木医の意見書には、「根まわしの期間が取れない場合には、遅くとも3月末までに移植を完了させなければならない」と、オオクスノキ移植に関する注意事項があります。しかし、申請業務や工事の遅れより、業者はこの時期に移植作業を行えず、最終的に重機通行許可が下りたのは511日となりました。現状のスケジュールからみますと、オオクスノキの移植終了は5月下旬となり、2ヶ月の遅れは大きな樹木にとっては致命傷になりかねません。

 

  さらに、移植先はケヤキの大木1本を伐採したあと、もう1本のケヤキ大木が根を張る場所に隣接するという、オオクスノキにとっては非常に条件の悪いスペースです。「集合住宅」の建設計画を、わずか1mほどセットッバックさせるだけで、これらの樹木は伐採されずに、あるいは移植などという枯死の可能性が高い方法をとらなくても、すべて残せるはずなのです。このままでは、オオクスノキとケヤキの大木の双方が、共倒れになる怖れさえあります。

 

  新宿区にとっていまや貴重な武蔵野原生林の大樹が、いともたやすく伐採され、枯死のリスクが高い移植が強行されようとしています。このような事態になったのは、区「みどりの推進審議会」委員の依頼により作成された樹木医の意見書をいっさい無視した、新日本建設株式会社の強引かつ不誠実な計画にもよりますが、同意見書を尊重し行政へと活かすことができない新宿区の、絶望的な縦割り行政に起因するものです。

 

  つまり、従来の「緑化計画書」では問題が続出したため、業者が新たな「緑化計画書」変更版を認可されたのが323日。327日より、中小の樹木伐採開始から南側のサクラの巨木伐採までのリードタイムが3週間。(終了は417)  このため、移植に必要な新宿区と警察署の重機通行許可は、明日の511日と大きくずれ込みました。樹木医が、オオクスノキの移植は3月末までという、枯死リスクを回避するために設定したタイムリミットから、1ヶ月半も経過してしまったことになります。すでに移植をしても手遅れで枯死するかもしれない・・・という、目の前にある大きな危機に対して、「道とみどりの課」は認可後は「関与せず」を繰り返すばかりで、移植計画の見直しをしようとはしません。また、新宿区の別の部署は枯死の危険性を知ってか知らずか、移植作業のための重機通行許可をすんなり出してしまっています。

 

  このオオクスノキが枯死すれば、敷地の緑化率が区の規定を大きく下まわり、建築確認も不可能になることは、安易な特例安全認定を許した建築課も重々承知しているはずですが、移植作業の再検討の声は、ここからもまったく出てきません。さまざまな問題が噴出し、申請から3ヶ月が経過しても建築確認が下りない異常な状態がつづいている中、「トラスト基金」や周辺住民の声を無視して、業者は屋敷森の形跡を少しでも早く消してしまいたいのか、ただただ樹木を伐採しつづけ、いままた枯死のリスクが高まった移植作業を強行しようとしています。

  先日、NHKの「特報首都圏」が全国ネットで再放送されることが決定し、下落合のみどりの問題を関東甲信越地方ばかりでなく、全国のより多くのみなさんが認知する日が近いと思われますが、このテーマや問題に対する新宿区の対応は、依然として一貫性がまったく見られないのが実情です。移植作業の見直しについて、NHKの「特報首都圏」の番組中でも「みどりを守りたい」とコメントしていた「道とみどりの課」課長へ、510日に「みどりの推進審議会」委員から再検討の提言をしていただきましたが、移植・伐採の中止見直しの知らせは、きょう現在「トラスト基金」には入ってきていません。

 

511日には、時機を逸したオオクスノキの移植作業の開始が、中山弘子新宿区長にも直接伝わることになっているようです。区長をはじめ、道とみどりの課、建築課などを含めた新宿区の勇気ある、そして聡明な決断に期待したいと思います。

 

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