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中山新宿区長への公開質問状2

 

  「下落合みどりトラスト基金」は、周辺住民のみなさんが中山新宿区長あてに提出した、「公開質問状2」を入手いたしましたので、以下に全文を紹介します。

 

  重機が搬入され、伐採作業員が到着した現時点における最大の課題は、「重層長屋」(実質マンション)の計画自体が、裁判の結果いかんによってはまったくの白紙になる可能性が残されているにもかかわらず、目白崖線に残る貴重な武蔵野原生林の動植物を、「開発」という名の破壊で根こそぎにしようとしている点です。

 

  東京地裁の判決を待たずに、ひたすら利潤追求のために既成事実を積み重ね、貴重な自然を破壊する新日本建設株式会社の社会的モラルのなさも大きな問題ですが、新宿区長が知らないうちに建築課の一担当者によるきわめてずさんな判断により、業者の申請へ軽率な「安全認定」を下してしまった新宿区の過ちを、自ら認めようとしない点がより深刻だと考えます。

 

  周辺住民のみなさんは、新宿区に対して上記の問題に対する公開質問状を再び提出しました。内容は、特例による「安全認定」の課題をはじめ、緑化計画書の不備、擁壁の疑問点など多伎にわたります。各部局間において統一性のない新宿区の縦割り行政のせいで、さまざまな矛盾点が生じているというものでした。

 

  一例を挙げますと、新宿区建築課が2004(平成16)12月に特例「安全認定」した際、これを不服とした周辺住民による審査請求(安全認定の再審査の要求)が、翌年1月になされています。しかし、そのさなかの2月に、新宿区は土地取得を前提とした土地評価を土地鑑定士に依頼し、54,000万円という評価を受け入れています。ところが、この鑑定に関する内容は、なんと特例認定さえ困難な土地であるという理由で、54,000万円の価値しかない・・・というものでした。一方で自ら特例による「安全認定」をしておきながら、片方では「安全認定」がほぼ不可能だから54,000万円の評価しかできない・・・と認めてしまっていることになります。

 

  「トラスト基金」としましては、みどりを守ろうと土地の取得に前向きであった“新宿区”の姿勢に対し、たいへん大きな評価をしていますが、建築課が業者へ特例認定(1,000m2まのでの建物しか認めない土地に、3,000m2クラスの建物を認可)してしまった“新宿区”へは、その無謀な姿勢に怒りを覚えます。これは、典型的な縦割り行政の見本のようなケースで、ダブルスタンダードそのものだといえます。

 

  過ちや錯誤を認めることは、決して恥ずべきことではありません。行政がそれを認めることは、むしろ住民本位の民主的でスマートな姿勢に感じられるような時代となっています。ましてや、人命を左右するような重大な課題ではなく、“タヌキの森”の「安全認定」という建築課の一担当者が独走した「小さな」過ちです。これらの矛盾を認めない限り、裁判結果によっては、新宿区は後世により大きな汚点を残すことになってしまいます。それを避けるためにも、最高責任者である中山新宿区長がリーダーシップを発揮し、判決が下りる前に新宿区の過ちを認めることが、いま問われている最優先の課題です。そしてその英断は、後世に誇れる新宿区の貴重な自然環境を残すことへと直結しています。

 

  なお、周辺住民のみなさんが区長からの回答を入手しだい、こちらでも公開いたします。

 

新宿区長 中 山 弘 子 殿

平成18年3月20日

(周辺住民連署)

(弁護士3名連署)

 

下落合屋敷森の開発に関する公開質問状(その2)

 

下落合屋敷森の開発に関しましては、平成1827日付けで貴職に対し公開質問状を提出致したところであります。その後も新日本建設()3月中旬から解体工事を行うというスケジュールで工事を施行するとしており、一歩も譲らない状況にあります。

このような状況に鑑みまして、さらに様々な疑問点が明らかになってまいりましたので、下記の通り、ここに新宿区長殿に再度、直接に、公開質問状(その2)を提出させていただきます。貴職の標榜する行政の透明性を確保するためにも、私ども区民に直接速やかに、誠意を持って責任あるご回答をいただきたく、お願い申し上げます。

問1 安全認定処分に関連する疑問点

 

27日付の公開質問状のうち、安全認定処分に関連する問題点を質問しました、問3、問5、問6及び問7については、現在係争中であるため、回答を差し控えるとのことでありますが、区民に対して回答しないで業者に対して建築確認だけはするのでしょうか。そもそも、確認(安全認定)の適法性は業者及び区民に対し、まず先になされるべきものではなでしょうか。従って、再度回答されるようお願い致します。

さらに、新宿区建築課長は、本件認定処分は基準に適合しているから安全であると趣旨の発言を繰り返しています(例えば、32日の日本テレビ「ニュースプラス1」における同課長のコメント)。しかしながら、本件の場合、基準とは安全条例41項の規定(接道長さ8m)であり、これをクリアするのが基準適合です。同条3項による認定処分は個別の案件について当該敷地の形状と周辺地域の状況を具体的に検討し、特例として認めるのであって、決して基準適合ではありません。従って、安全上支障がないとして特例認定するためには、たんに基準適合と言うのではなく、新宿区として安全であることを当該敷地の形状と周辺地域の状況を総合的に判断して、かつ、具体的に立証すべきであると考えますが、この点についてもご回答下さい。本件認定処分の違法性、みどりの条例の否認脱法性、隣地崖地に対する大災害惹起の危険性は、以下のとおりですが、どうか、区長として責任あるご回答をお願い申し上げます。

 

問2 緑化計画認定と安全条例に関する疑問点

 

この点は特に重要なので整理して主張します。どうか、よくご精査してください。

 

1 みどりの条例11条(樹木等の保護及び回復)の義務違反

 

緑化計画はみどりの条例11条「今ある樹木及び樹林の保護に努め、除去するときは相応の樹木及び樹林の回復を図るよう努めなければならない。」との規定に適合するものでなければなりません。

しかるに、当緑化計画の既存樹木の残存と、新植樹木の植栽は以下の通りとなっています。

 ・高木  残存率12% 植栽率16%  合計(緑化保護率)28%

 ・中木  残存率63% 植栽率25%  合計(緑化保護率)88%

 ・低木  残存率 0% 植栽率43%  合計(緑化保護率)43%

樹木合計 残存率10% 植栽率39%  合計(緑化保護率)49%

 

また、地上部の緑化面積の状況は以下の通りとなっています。

 ・既存樹木  959.64u

 ・残存樹木  111.91u  残存率11.6%

 ・新規樹木   41.86u  植栽率 4.3%

合計緑化面積 153.77u  保護率16.0%

 

当計画地は平成16年に新宿区みどりの係により樹木調査された貴重なクスやキンモクセイ、樹形の良いケヤキ、サクラなどの高木はほとんどが伐採され(25本→残存3本)、新たに植栽されるのは4本しかなく、移植の配慮もない。当該地区の貴重な緑の中心になっている高木樹木の70%以上が無残にも失われることになります。

また、ツツジ、ツゲ、クチナシなどの豊かな低木については100%伐採され、新規植栽により43%程度の回復が図られたとしても過半の緑が消滅します。地上部の緑化面積にいたっては既存樹木の16%の保護・回復の緑化面積であり、建築物上に多少の緑化面積があっても条例違反を免責するものではありません。

 

2 通路幅員確保の疑問

 

@接道部の緑化は路地状空地に沿って幅7.5m、奥行きは隣地とのフェンスも含めると約70センチメートルの植栽スペースにボウカシ23本の生垣となっています。しかしこの部分には向かい側にゴミ持出しスペースが設置されており、安全上有効な幅員4mの確保は否認されています。

 

A敷地東側の隣地境界部分は既存樹木のシラカシを保存し新規植栽も加えて緑化面積に算入していますが、隣地境界と建物との距離(安全認定取消条件の安全空地)は2.5mであり、安全上、避難上有効として敷地周囲に設ける2.5mの安全空地(避難通路)の有効幅員の確保は否認されています。新宿区が定めた安全認定取消条件は東側有効幅員2.5m以上確保し、通行の障害となる場合には、「既存の植栽、樹木も伐採、移植する」と条件を付していますが、認定の緑化計画は同条件に大きく抵触します。

 

3 緑化面積算定の疑問

 

@高木は樹冠投影面積でも算定できることになっていますが、屋根付の駐輪場の上部まで地上部緑化面積に算入しているのは、みどりの条例基準の脱法であります。

 

A残存樹木のケヤキ、クスノキ、キンモクセイ(各1本)については樹冠径をそれぞれ13m、9.0m、5.7mとして樹冠投影面積を地上部緑化面積に算定していますが、その樹冠径の寸法に客観的根拠はありません。高木については3uまたは高さの7割を樹冠径とした円の面積として面積算定すべきであります。その場合ケヤキ、クスノキ、キンモクセイは樹冠径7m、5.6m、3.5mとして面積算定すると、地上部緑化面積はみどりの条例の基準を満たさなくなります。

 

Bゴミ置き場周辺や駐輪場と隣地との余り地にヒメヒサカキを新規樹木として緑化面積に算入していますが、幅30cmにも満たないクサビ状や棒状の狭小な部分まで緑化面積に算定して基準に適合させようとしているのは、本緑化計画は適正な敷地の緑化が困難であることを露呈しています。みどりの条例基準の脱法以外の何ものでもありません。

 

C接道の緑化において、路地状空地に幅7.5m、奥行き70センチメートル程の植栽スペースにボウカシ23本の生垣となっていますが、向かい側にはゴミ出しスペースが設置されており、安全上有効な4m確保は大きく否認されています。既存樹木の保護定着を確認し得ないオオクスノキを移植し、ケヤキを保存するとしたほかは、高木の70%以上が伐採され、地上部の緑化面積確保においては、保護率はわずか16%であり、みどりの条例11(樹木等の保護及び回復)違反であります。またオオクスノキを敷地外に移植する計画とのことでありますが、緑化面積確保において最も大きな割合をしめていたオオクスノキが外された場合、他の樹木で補えるか否か、再度審査する必要があります。

 

D樹木医の鑑定によりますと、オオクスノキは業者のいう根回しをせず移植する場合には、根針とのバランスをとるために大枝も大きく切断して葉をなくして移植するしかなく、この場合、緑化面積は大幅に減少し、認定の緑化計画は大きく否認されることになります。

 

Eさらには、屋根付駐車場の上部や幅30cmにも満たないクサビ状や棒状の狭小な部分まで緑化面積に参入し緑化率をクリアしようとしていますが、非常識であります。そもそも、みどりの条例で要求する緑化率とは、そのようなことを想定してはいません。これでは、せっかくのみどりの条例が台無しになります。いかがでしょうか。

 

4 新宿区長の二つの認定の同時履行責任

 

みどりの条例251項は、本件建築行為等を行おうとする者は、緑化計画書を区長に提出し、認定を受けなければならないと規定しています。

みどりの条例は建築基準関係規定ではありませんが、新宿区の大切な行政法規(法律)であります。かつ、新宿区長は建築確認審査機関に対し、みどりの条例を含む新宿区の行政法規との整合性の確保を通知しています。そのため新宿区は「大規模開発プロジェクト等連絡会」を設けています。

上申人は新宿区長認定の緑化計画書について、同条例・規則・作成の手引に基づくならば、同緑化基準に適合しない違法の認定であり、その取消を求めるものでありますが、少なくとも、同認定と安全条例43項の本件安全認定処分(計画建物と隣地境界線との間に有効幅員東側2.5mその他2m以上の安全空地を設けること。かつ、同空地には通行の障害となる建築物・工作物は設けない。既存の植栽・樹木についても同空地の通行の障害となる場合には伐採・移植することとする。そして、この条件が遵守されない場合、本件安全認定処分を取り消すことがあるとする条件付取消安全認定処分)との整合性が確保されなければ、新宿区の法律行政として違法であります。

申し上げるまでもなく、新宿区長は自らが各認定した本件緑化計画の履行と上記の安全空地の確保の履行を実現させる法律上の責任を負っています。本件緑化計画は前記のとおり、みどりの条例が定める緑化基準に適合しない違法でありますが、その履行は本件安全認定の条件と抵触する(両立しない・両立できない関係にある)ものであり、本件安全認定のすみやかな取消を上申するものです。以上につきまして、責任あるご回答を頂きたくお願い申し上げます。

 

問3 南側擁壁(工作物)設置に関する疑問点

 

 新宿区長は敷地南側について、業者に対し安全条例6条・建築基準法施行令142条に基づき2mを超える擁壁(工作物)の確認申請が必要であるとし、同確認審査においてその安全審査をすると、前回の公開質問状に対して区長から回答をいただきました。同回答には心から敬意を表する次第です。区長の同回答は新宿区建築課長において現地の延長40m以上にも及ぶ崖状況(最高高低差5m以上)の検証に基づき、上記工作物の確認申請審査の必要が本件建築確認の適法性(安全性)の要件であると判断し、それに基づき回答されたものであります。

ちなみに、業者により住民説明会に提出された別添の図面(同図面は正確な内容が分からない図面である。正確にわかる図面の提出を求めたところ、業者は直ちに提出すると回答したが、その後、新宿区の指導により提出できないと言って今に至るも正確な内容が分かる図面の提出はない)によりますと、以下のとおり、数々の問題点を指摘することができます。

 

2 擁壁計画の危険性と問題点

 

@別添の隣地境界線擁壁計画図によりますと、擁壁または塀と建物との距離は、ニ地点では約1.3m、ホ地点では約1.7mであり、安全条例4条安全認定の取消条件である避難経路として設ける建物周囲の安全空地の有効幅員2m以上は確保されていません。安全認定の取消条件と明らかに抵触しています。

 

A擁壁には条例6条で規定される水抜穴を設ける必要があります。この水抜穴からの排水および敷地から隣地への水の流出を防ぐための排水設備が計画されていません。この排水設備を設けるのためのスペースを考慮すれば、上記の安全認定の取消条件である安全空地の有効幅員2m以上は更に狭められ、安全認定の条件は否認されます。

 

B敷地南側は60度を超える傾斜地になっており、一部はコンクリートブロック積造や石積みのガケであります。計画では隣地境界にギリギリに接して擁壁を築造することにしていますが、南側隣地の60度を超える傾斜地の自然ガケ、既存の石積みガケ、擁壁の崩落防止等の安全確保が全く考慮されていません。

 

C東南側隣地部分は5m以上の高低差があり、三段にもなる既存の擁壁が設けられていますが、本計画において安全条例・建築基準法施行令の規定に適合するその擁壁計画は全く不明であります。

 

Dそもそも解体工事の仮設計画や擁壁計画においては隣地側が60度を超える傾斜が存在することを考慮した計画とはなっておらず、隣地の建物や地盤に関しての安全対策や排水処理に重大な危険を惹起させる恐れは極めて必至であります。

 

 安全条例43項は、建築敷地内だけでなく、その「周囲の状況」を防火上、避難上、消火上、救助活動上迅速かつ適切に行えるかについて総合的に判断して、安全上支障がないと認めた場合に、例外的に適用されるものであります。

 

@本件敷地南側の延長40m以上にも及ぶ崖(最高高低差5m以上)の状況は、別添の現場写真@〜Qのとおりであります。どうか、よくご確認していただきたい。できましたら、現地を実地にご視察いただきたく上申する次第です。建築課長は条例43項の安全認定において、上記がけ状況を検証した上で43項の本件安全認定をしたはずであります(もとより現地を検証しなければ43項の認定はできません)。

 

A而して、崖の状況は上記の写真のとおりであります。この現況において、本件がけ及びその周囲の状況の安全性を全く判断しないでした本件安全認定の違法性は明らかであります。本件安全認定には前記の安全空地の条件は付されていますが、崖の延長40m以上(最高高低差5m以上)に及ぶ本件がけ及びその周囲の安全性(区長が本件建築確認のため条例6条に基づく工作物の確認申請をさせその安全性の確保を審査すると回答)については、全く判断しないでした43項安全認定であることは、同認定書上自認されています。同認定書の図面をよく見ていただきたい。

一見して、同認定書には本件がけ及びその周囲の安全性確認について全く条件は付されていなません。安全確保条件が付されていないどころか、安全認定図面と記載の認定条件を見ると、本件敷地とその南側周囲には上記本件がけは全く存せず、境界南側隣地とはフラットの地続きの敷地の建築計画となっており、それを前提とした安全認定になっています。従いまして、建築課長は現地を検証しないで、本件安全認定を速断した重大な疑いがあります。責任あるご回答をお願い申し上げます。

 

B新宿区長認定の上記安全認定図面をどうかよくご確認いただきたい。このまま、かかる延長40m以上60度を越える傾斜崖の存在を無視して、本件建築工事と擁壁工事が強行されれば大災害の惹起は必至であります。その場合、同安全認定した新宿区長の責任はまことに重大であります。

 

4 住民説明会に提出された別添の図面によれば、運動場(敷地とフラットな隣地)のような平地に矢板をうちこみ擁壁を構築するような通常の工事を行うように見えます。しかしながら、本件敷地南側は60度以上の勾配の傾斜地であり、その矢板を打ち込めば、崩壊の危険性が極めて高いものです。

前回の公開質問状に対する新宿区長の回答によりますれば、「2mを越える擁壁については、建築基準法及び東京都建築条例において、その安全性に関する規定があり、建築確認において当該規定を満たすのであるか審査します。」としていますが、建築基準法施行令142条、建築安全条例6条等に詳細な安全技術基準が定められているところであり、当然これにより指定工作物にかかる建築確認において詳細かつ慎重に周囲の安全性が検証されなければなりません。

 

 上記につきまして、新宿消防署長に対する上申書を同封しますので、ご参照下さい。

 

問4 敷地南西側隣地の地権者に対する権利侵害の重大な虞

 

新宿区は上記のとおり敷地南側について安全条例6条に基づき高さ2mを超える擁壁の確認申請を業者に対して求めています。同確認申請の対象の崖は延長40m以上に及び、最高高低差5m以上、60度を超える傾斜地であり、その相当部分が自然崖からなり、複雑な曲線からなるものです。

その境界線上に矢板を打ち込み、コンクリートを流し込み垂直の高さ2mを超える延長40m以上の複雑曲線を形成する擁壁を設置しようとすれば、必然的に隣地に対し、土砂崩れ等の大災害を惹起させるのは必至であります。仮に、設置できても水突から流れる水、土砂等が隣地を侵害します。もとより、隣地に立ち入らないでかかる設置工事は全く不可能であります。業者による隣地に対する違法行為が心配されなくもありません。

以上の次第ですから、隣地の地権者はかかる無謀な工事に強く抗議し、仮に隣地立入を求められても承諾しない旨、業者に対し言明しています。その通知文を同封しますので、ご参照下さい。

もし、新宿区がかかる業者の60度を超える傾斜地の境界線に2mを超える延長40m以上に及ぶ擁壁の建築確認をすることは、結果として、重大な災害と権利侵害を惹起することになりかねません。かかる場合、貴職におかれまして、重大な責任を負担することになりますが、慎重の上にも慎重にご判断いただきたく切にお願い申し上げる次第です。 

 

問5 安全認定処分と鑑定価格の関係に関する疑問点

 

 建築主は、本件敷地に、延べ面積2,991.78u、30戸、地上3階地下1階の重層長屋を建築するため、建築安全条例43項の認定を申請したところ、新宿区長は平成161222日付けをもって、同認定処分をなしました。

 

 平成17215日付けの新宿区長が依頼した不動産鑑定評価書(新宿区長に報告されたもの)によれば、大筋次のような根拠に基づき本件敷地を54,000万円としています。

 

@標準画地の価格から比較して求めた価格を算出するに当たっては、行政的条件として「建築安全条例の第4条第1項により延面積が1,000u以下に制限されます。同条項の緩和規定が有効か否かは個別の判断となるが、仮に3項が有効であったとしても災害時の安全性を考慮するとさほど大きな延面積のアップは難しい」と判しています。

 

A関発法による試算価格の算出に当たっては、延床面積997.20u、12戸、地上2階地下0階のテラスハウスを建築して分譲することを前提としています。

 

 の認定処分によれば2,991.78uの重層長屋が建つという(だから業者は105,000万円を請求しているようだ)。2の鑑定評価では、997.20uのテラスハウスしか建たないという(だから鑑定評価額は54,000万円)。明らかに矛盾しています。

 

 以上の点を踏まえて、次の諸点を質問します。

 

@新宿区がの鑑定評価を依頼するに当たって、の認定処分を既にしていることを不動産鑑定士に通知しなかったのでしょうか。また、審査請求されていることを伝えたのでしょうか。

 

A新宿区が業者に対し平成171031日付の要望書で「区では不動産鑑定額に下落合みどりトラストの寄付金を加算した額以上の額では、多くの区民の理解を得る事が困難です。」と述べています。既にの認定処分をしているにも拘わらず、上記鑑定書の認定処分を考慮外とした鑑定評価額をベースに業者に要望を行っているのは何故でしょうか。

 

Bどう考えても、本件敷地の道路状況、屋敷森のみどりの価値、そして南側の崖地状況に基づけば、新宿区長が依頼した不動産鑑定評価書の法律判断のほうが正当です。ちなみに、不動産鑑定は「合理的かつ合法的な」最有効使用の正常価格を評価するものです。従って、これと矛盾する認定処分は取消すべきではないでしょうか。

 

Cかかる矛盾した事務処理を新宿区が行った意図は、どこにあるのでしょうか。それとも、縦割り行政によるものでしょうか。

 

D区長依頼の本不動産鑑定の鑑定料は少なくない金額と見られます。意味のない鑑定であればそれは新宿区に損害を与えることになりますが、いかがでしょうか。上申人らはこの点についても疑問を持っています。

 

E業者は105,000万円を請求していますが、購入の売買契約書を秘密にしています。行政が本件安全認定によって、売買契約書の購入代金を開示しない業者に不当な利益をもたらすことに、結果として加担することになるのではないかとの、住民の批判が少なくありません。それは貴職の本意ではないと確信するものですが、いかがお考えでしょうか。

 

問6 区長の大英断を上申

 

 業者は、近隣住民に説明会を繰り返し行ってはいますが、計画そのものについては新宿区の安全認定で認められたから、ぎりぎり一杯の建築物を建てるというのみであります。

 

2 近隣住民の多くは、特に安全や緑の問題を憂慮し、開発計画そのものに反対しており、安全認定処分の取消訴訟を東京地裁に行っています。さらに建築確認が下りればその取消のための審査請求や訴訟を提起しようとしています。業者との説明会では新宿区が認めたから建築するというだけなので、住民は、新宿区の行った行政処分に真っ向から法的争いを行なわざるを得ません。

 

 せっかく54,000万円の公園化予算の確保という大英断を下されたのでありますから、道路状況と安全認定問題、緑の保全問題、南側隣地崖地の安全問題、安全認定と鑑定評価の矛盾問題、業者は購入代金を開示しない等々、諸般の情勢を勘案し、判決が出る前に新宿区をあげて最大限の努力を傾注して、公園化を実現すべく、強力なリーダーシップを発揮していただけないでしょうか。

 

  2つの建築確認について、法65項規定の業者の申請書の記載によっては建築基準関係規定に適合するかどうか決定することができないとして、そして、裁判の決着が着くまで現状を変更しないよう業者に強力に指導を行い、貴重なみどりが失われ、重大な災害を惹起させ、そして後で中野区のように工事中断、建築取壊しといった事態を生じないよう、区民の宝物となる公園化を実現し、新宿区の歴史に残る大英断をしていただけないでしょうか。

 

以上のとおり、上申いたします。

 

 

 

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