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49日の「下落合みどりトラスト基金」第3回報告会レポート

 

「下落合みどりトラスト基金」の第3回報告会が、49日(土)午後6時より落合第一地域センター3階の集会室において開催されました。ちょうど東京じゅうの夜桜が見ごろとなった週末のため、参加される方はいつもより少なめだと予想していたのですが、それでも閉会までにはのべ100名弱のみなさんが参集されました。また、新たに地元選出の議員の方々も、党派を超えて多数参加くださいました。

 

■ビデオ放映

旧・遠藤邸の最新映像を含む、屋敷森の様子が放映されました。庭の東側にあるサクラの巨木が満開で、これから新緑の季節にかけて、森は1年でもっとも美しい表情を見せます。

 

■経過報告

おもに屋敷の解体・移築作業が始まって以降の、「トラスト基金」の活動経過を武田事務局長より報告させていただきました。新宿区への署名活動の強化をはじめ、専門家の方々からのアプローチの展開、さらに企業等による大口寄付などの受け皿づくり、安全性に懸念のある建築に対する審査請求についてなど、より幅広い活動の必要性が訴求されました。

特に、わずか4mほどの公道に接しているにすぎない集合住宅(マンション状長屋)の建築計画が、救急車輌の出入りが必要となる火災などを含め、防災上においても「安全」だと認めた新宿区の認定に対し、住民たちが行っている審査請求の内容も詳しく紹介されました。また、企業の大口寄付を募るため、国際青年環境NGOである「A SEED JAPANClick!の理事でいらっしゃいます青木様にもお越しいただき、特定公益増進法人へ寄付協力の打診をしている旨、報告させていただきました。

 

 

■ひかり工房社長の小玉様による報告

屋敷の解体・移築業者である、ひかり工房(山形県)の小玉社長が報告会へ出席くださいました。屋敷の解体については地元でも批判が少なくない中で、まず報告会へご出席いただいた“勇気”に敬意を表します。屋敷内部の解体とともにいろいろな発見があったこと、解体した屋敷の部材は文化財として自治体が「残す」決定をする可能性がゼロではないので、一応倉庫を借りて東京に残していること、新日本建設に428日までに解体を終えるように強く要請されていること、屋敷の建材は外様大名だった前田家らしくあえて最高の部材をふんだんに、しかしきわめて目立たないように使用していること・・・などが報告されました。

●前田家の家紋を発見

家紋を欄間へ4つに分割してデザインしているらしく、それを合体させると前田家の家紋になるようです。それが前田家のどの家紋(富山or大聖寺)なのか詳細はまだ不明ですが、「前田子爵邸を移築して建造した」という地元の伝承はどうやら正しかった模様です。建物は、明らかに“茶の湯”をコンセプトに造られているとのことでした。昨年12月に行われた新宿区による建物調査の際、なぜそこまでわからなかったのか、いまとなってはたいへん悔やまれます。

●髷(まげ)と古文書を発見

また、報告会前日の8()には、天井裏から髷(まげ)と古文書が見つかり、屋敷の部屋または部材の一部は江戸期までたどれるのが判明しています。まだこれからも新たな発見がありそうですが、続報はこのサイトで随時、ご報告しようと考えています。

●屋敷に関する質疑応答

屋敷の移築年代は?

下落合への移築は、明治の末から大正初期ぐらいにかけてだと思う。部材は古く、江戸時代のものも使われている。

もし新宿区が残したいと言ったら、建物を元へもどす場合の経費はどうするか?

新宿区が予算を用意できれば異存はないが、現状では建物の保存まではかなり難しいのかもしれない。

旧・遠藤邸から出た古文書等はどうするか?

新宿区には、郷土史研究のためにコピーと写真は残していく。実物は、もともとそれがあった屋敷とともに、一緒に移すのがひかり工房の基本的な考えだ。

ひかり工房と新日本建設の関係は?

土地も建物も、法律的には新日本建設の名義だが、それ以前に建物を購入しているひかり工房の存在を知っているので、解体・移築は黙認してくれている・・・という形式だ。その期限が428までで、それまでに作業を終えないともはや待てないと言われている。

維持経費がとてもたいへんだったろうと想像するが、長い間、原生の緑と貴重な屋敷を残してくれた、旧住民の方々に感謝したい。

 

■新宿区議会議員のみなさん

屋敷を元へもどし、そのまま維持することを前提とした買い取りは、現在の新宿区の財政事情ではかなり難しそう・・・とのことです。時間が限られている中で、みどりだけでも残せたら・・・という方向性に転換せざるをえないのではないかとのお話が出ました。すばらしい屋敷であることが改めて確認できたことはうれしいが、今後、屋敷を残すことによる新宿区の継続的な維持管理と経済的な負担を考えると、本来の目的であるみどり保存を優先して、屋敷はあきらめるほうが現実的だとのご意見が強く出ました。

新宿区自体の対応は、以前に比べて相当変ってきているようです。地元の盛り上がりを伝えるために、新宿区の「道とみどりの課Click!などへ、どんどん質問や要望することの重要性が指摘されました。また、415()に予定されている「新宿区みどりの推進審議会Click!で、「トラスト基金」の活動を取り上げるとのことです。区民の傍聴ができるので、ぜひ多くの方々に参加してほしいとのことです。。

 

■質疑応答

新宿区からの行政指導はどうなっているのか?

条例や規則に基づいてするのが行政指導だが、なかなか難しいのが現状だ。「みどりの条例」をクリアしないと建築許可は出せないし、地元への説明も業者は二度しか行っていない。だから、428日に向けて新日本建設はなんらかの動きを見せるかもしれない。業者と新宿区は折衝をつづけているが、業者側は価格を下げる姿勢を見せていない。新宿区全体のできるだけ大勢の人たちの声が必要で、それによって区長を強く後押しできる。下落合という1エリアではなく、新宿区全体のテーマとして捉えられるような運動にしたい。

なぜ業者側へ強く指導できないのか?

「みどりの条例」の事前協議をせずに、建築確認申請は出せない。もし建設されることになってしまったら、区のほうでは巨木は残せと指導していくことはすでに決めているようだが、法的にみどりを残せということを義務づけることは、現状の法律ではできない。

もう少し地元を意識した活動をしてもいいのではないかと思う。まず、町会を意識した活動をすべきだったと思う。みどりのベルトがどんどん寸断されていく中で、せめてこれ以上みどりが減らないように残していきたい。みどりを守るというメインテーマであるなら、わたしたちは協力を惜しまない。町会も巻き込んだ展開が必要だと思う。

いろいろな機会をとらえて、署名・募金活動を展開できたらと考えている。「次の子供たちにみどりを、この街をどのようなかたちで残すのか?」というのは、いまのわたしたちにとっては大事なテーマだ。

地域の運動と、その他の地域からのバックアップが有機的に結びついた、このような「トラスト基金」はすばらしいと思うので強く応援したい。

大口寄付の受け皿とはどういうことか?

日本では企業による大口寄附は、税金の控除対象にはならない。おかしなことだと思うが、寄付しても税金がかかるのでは企業から多額の寄付は望めない。だから、企業からの大口寄附を受けやすくするために、税金のかからない受け皿づくりをする必要がある。

みどりを残すために、新日本建設の良心に任せるという声もあるが、周囲の同様のケースをみてもありえないと思う。古木や巨木は、すべて伐られると考えて間違いない。だから、現在ある木々をどうやって残すか・・・と考えた場合、「みどりの条例」は残念ながらなんの役にも立たない。それよりは、防火・防災の面から消防法に基づき、新宿区から新日本建設へ「建てられない」ということを認識させ、集合住宅の建設をあきらめさせ、交渉のテーブルにつかせることだと思う。

428日までに、新日本建設が樹木を切らない・・・という保障はどこにもない。だから、いまの状況は新日本建設に「諦めさせる」ことだと思う。

もっと強力な指導を新宿区からはできないのか?

建築審査会で建物が建てられるかどうか審議中で、そこでみどり保存へ有利に展開させる方法が考えられる。新宿区が一度出した認可を、撤回させる方向だ。新宿区は、みどりは残そうという意向があるから買い取り資金を用意している。それには、より多くの新宿区住民の後押しが必要だと思う。区長が自信をもって区民の総意だということが言えれば、予算を増やすことが可能かもしれない。条例など法的な面からは、業者に対してなかなか抑えができないが、いろいろな手法で圧力をかけることはできると思う。

神田川流域に関心があるが、東京都の自然をどう保護していけるのかのバロメーターが神田川の河岸段丘(ハケ/バッケ)だと考えている。広く言えば、新宿区ばかりでなく吉祥寺から皇居(千代田城)までの湧水地である河岸段丘をどう維持するか・・・という視点も含めて考えるべきだと思う。動物から植物、微生物まで含めてどこまで残せるかが、東京の自然のバロメーターとなる。

今回はいつもより1時間も早く開会したにもかかわらず、またもや地域センターの閉館時間まで報告会はつづきました。次から次へと質問や意見表明が相つぎ、屋敷の解体・移築はしかたがないのかもしれないが、武蔵野原生林である屋敷森だけはなんとしても丸ごと残したい・・・という声が多かったように感じました。

新宿区の「道とみどりの課」への多くの方々の要望、また「新宿区みどりの推進審議会」へのみなさんのご参加を、「下落合みどりトラスト基金」ではお待ちしています。

 

 

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