Chichiko Papalog 「気になるエトセトラ」オルタネイト・テイク

 

なんにも見えない愛宕山

まさか、これほど展望がきかなくなっているとは思わなかった。愛宕神社の男坂の上からの眺めは、もはや風景を形成しない。山頂にはもう1ヶ所、駐車場から抜けて愛宕隧道の上へと出る道があり、その途中の石段からも眺めがよかったはずなのだが、愛宕グリーン・ヒルズ(森ビル)に大きく西側の視界をさえぎられて興ざめだ。

いまから150年前、この山頂から大江戸(おえど)の街並みを撮影したベアトの写真が残っている。もし、ベアトが眺めのいい場所からの撮影を思いつかず、府内散歩の護衛をする幕府の役人が愛宕山を思いつかなかったとしたら、大江戸のパノラマは永久に見られなかったかもしれないのだ。そう思うと、この写真の存在は奇跡に近い。

山頂の愛宕神社は、最近、うら若い姉妹の神主で有名になった。おふたりともまだ権禰宜だが、いずれは禰宜から権宮司、そして愛宕宮司へとなるのだろう。これについては、改めて書いてみたい。そういえば、昔日の両国花火「鍵屋」の主も、若い女性に代替わりしたばかりだ。巫女王(ふじょうおう)をいただく邪馬壱国の、昔からの原日本的な文化がいまだ色濃く残る関東ならでは、「江戸」っぽくてなかなかいい。

戦前は、各町内ごとに政(まつりごと)の巫女さんと、万(よろず)相談の巫女さんがいた。政治家も相談に訪れる、女性占い師の多いこの土地ならではの風情だが、江戸でいちばん威厳のある巫女王は、つまるところ「神さん」なのかもしれない。

 

あたご01

愛宕01

パノラマ01

 愛宕グリーン・ヒルズから銀座方面を眺めるが、汐留の高層ビルに邪魔されてよく見えない。震災で焼けた築地本願寺も、名物の大屋根を復元せず、コンクリートの新しい建物になってしまったため、町に溶け込んで発見できない。

パノラマ02

中央の木々が繁る一帯が浜御殿で、その右手に竹芝桟橋と日の出桟橋がある。浜御殿は、両国広小路で見世物にかかったインド象が幕府に献上され、飼われていたところ。正月には、将軍家が好んだ鷹狩りの実演も行われている。

パノラマ03

浜松町駅前に霞ヶ関ビルをしのぐ、茶色の貿易センタービルが建てられたとき、なんて高いビルなんだと見上げた憶えがある。いま、改めて眺めると、なんとも地味で冴えないビルでまったく目立たない。右手の東芝本社ビルも、近ごろは小さく感じる。

パノラマ04

東京タワーから見下ろした増上寺から芝公園あたり。レインボーブリッジから台場にかけての展望が拡がっている。手前は建築中のホテル。

 

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